まだある論文の”不思議” その2

∨粗で、在宅化を進めようとする政府の障害児福祉施策から論を起こしながら、2度とその問題に戻っていかないことの不思議。

「イントロダクション」は、脱施設をうたう政府の障害児福祉施策と、それに対してアメリカ小児科学会障害児セクションが賛意を表したことから話が始まります。後者の「障害の有無を問わず子どもは本来家族のもとで育つべきであり、多くの親がそれを望んでいる」とのコメントも紹介されます。それに続く部分でも、成長抑制療法を、在宅ケアを続行するための難問のひとつを解決し、親が家庭でケアできる期間を延ばす方策としています。

論文の副題も「古くからのジレンマへの新たなアプローチ」。ここでいう「ジレンマ」とは、親が在宅でケアしたいと望んでも介護負担からそれが難しくなっていくことを指していると思われます。やはり論文の姿勢としては、重症障害児の在宅ケアの負担軽減策として成長抑制療法を提唱しているのでしょう。

しかし、その割には在宅サービスの現状についてデモグラフィックな情報は一切出てこないし、何の言及もありません。その後のメディアでの発言でもシンポでの発言でも、医師らは介護サービスの現状については、ほとんど興味がないように(もしかしたら知識もないのかも?)思えます。論文でも、イントロダクションの冒頭の後、本文では脱施設をうたう障害児福祉施策の話には2度と戻りません。