医療費削減につながるかどうかの問題? WPの新型遺伝子診断記事

米国で昨年12月から売り出されている新型出生前遺伝子診断、
販売している企業によれば、すでに何万人もの女性が受けたと言うが、

FDAの規制対象とはなっておらず、
また正確性やどういう役割を果たすことになるかについて疑問視する声もあり、

そのために保険会社は未だ実験的なものと捉えて給付に踏み切っていないため、
最大1900ドルもする、たいへん高価な検査となっている。

したがって、この新型検査が
羊水穿刺のような侵襲的な検査数と早産件数を減らすことで
医療コストの削減につながるものか、それとも
もともと早産リスクから羊水穿刺など受けようとも思わなかった女性が
新型なら受けることで却って医療コストを膨らませるものか、まだ分からない。

米国産科婦人科学会は11月20日に初めての見解を追発表し、
「ルーティーンで行う出生前検査に含めるべきではない」と結論。

ただし、検査の限界についてきちんとカウンセリングを行う限りにおいては
トリソミーのリスクが高い患者には申し出てもよい、としており、

これらの点では、これまでに出されている
米国遺伝カウンセラー協会や出生前診断国際協会の見解と同じで、

新型検査がこれまでの侵襲的な検査と同程度に正確かが証明されていないので
この検査で陽性と出た人には羊水穿刺や絨毛検査を受けるように勧めている点でも
これら3団体の見解は同じ。

保険会社は慎重に今後の研究結果を見極めると言っている一方、
販売企業は精度や患者の意思決定への影響に関するデータがとり揃うのを心待ちにしつつ
「医療費削減効果があるとなれば、それは嬉しいボーナス」。

既に多くの女性が検査を受けることを望んでおり、
「これほどまでに消費者の需要があるとはだれも予測しなかったのでは」とも。

現在は販売価格1900ドルとか1200ドルのうち、
販売会社がコストの大半を引き受けているため、
保険のある人で200ドル程度の負担、

保険のない人には特に自費プランが用意されていて
450~500ドル程度で受けられる。

(保険会社が給付対象にしていないという情報との整合性は私には?)

この記事の冒頭で紹介されているハイリスクとされる妊婦さんの主治医は
どういう使い方がよいのかについては疑問点もあるにせよ、
目の前の患者さんには知らせる必要がある、と語り、

「出たばかりの検査なので、どういう使い方がベストなのか分からない。
でも自分には患者にそういう選択肢があることは知らせる倫理的な義務があると思う」

ちなみにこのドクターは
MaterniT21という新型検査の販売元であるSequenom社の
講演陣の一人で、同社の求めで講演する際には講演料を受け取っている。

また、もう一人別の産婦人科医は
患者は従来の検査をパスして、いきなり新型を受けたいと言っている、と言い、
「私の患者は平均的なニュー・ヨーカーですからね。
結果が今日出るとしても遅いんですよ」



この記事のうち、「倫理」という言葉が使われているのは一か所で、
医師である自分には患者に選択肢を知らせる「倫理的義務」がある、という個所のみ。

以下のリンクのように、
英語圏では私がこのブログで拾ってきただけでも
2008年の早くから、この非侵襲的な出生前診断については
様々に倫理問題が議論されてきているはずなのだけれど……?

ちなみに、Sequenom社に関して2008年に当ブログが拾っていた情報は以下 ↓
出生前診断をショーバイで語るとこうなる(2008/11/21)


それ以外の関連エントリーはこちら ↓








日本で議論になってから書いたエントリーは以下。
ダウン症の新型検査をめぐって(2012/9/9)
新型出生前遺伝子診断に関する米英の動きと議論(2012/11/22)