「パリの女は産んでいる」からフランスの生殖医療の周辺メモ

以下の本を読みました。


このブログでは英語圏以外の事情がなかなか把握できにくいので、
この本に出ていたフランスの生殖医療やその周辺に関する諸々を、
まず網羅的に以下にメモしておこう、と。


・最初の試験管ベビーが生まれたのは1982年。

・1994年に生命倫理に関する法律で生殖医療に制限が設けられた。
生殖補助医療が認められるのは婚姻夫婦あるいは2年以上同居している事実婚カップルのみ。
また、自然に生殖できる年齢の女性のみ。
(法的に明記されていないが一説には48歳まで、とも)

非配偶者間人工・体外受精は、生殖子のいずれかがカップルのものであることが条件。
代理母による出産も禁止。

配偶者死後の人工・体外受精も禁止。

・生殖補助医療で生まれる子供は全体の1.8%。(2000年の統計)
現在の体外受精の成功率は17%。
顕微受精は1994年から可能となり、成功率は現在20%。
チューブで精液を注入する人工授精も含めて、年間およそ1万5000人が生まれている。
体外受精の件数は年間4万件。患者の平均年齢は35歳。

・1999年PACS法(PACS連帯市民契約)

同性愛カップルに一定の法的権利を認めたが、子供を持つ権利までは認められなかった。
しかし、現実には99年の時点で400人の子どもが同性愛の親によって育てられている。
(カミングアウトする前の結婚でできた子どもたちも含む)

・同性愛カップルに養子の権利を認めているのはヨーロッパでは
アイスランドノルウェイスウェーデン、イギリス、オランダ。
ベルギーはレズビアンの人工授精を許可。

(自殺幇助でも新・優生思想でも“先進的”な国が多いことに注目しておきたい)

・養子の申請数は現在、年間6000件で米国に次いで2位。

 一方、フランス国内で養子になれる子どもの数は年間1000人程度なので
 ウエイティング・リストは現在2万組。
 年間3000件は海外から子どもを連れてくる国際養子縁組で、
 子どもたちが連れてこられるのはペルー、メキシコ、カンボジアベトナム

・フランスの女性の75%は子どもが生まれても仕事を続けている(第1子の場合)。
 しかし、保育園は絶対的に不足している。(3歳児以下の保育園児率9%以下)。

そこで活用されているのが「ヌヌー」と呼ばれる個人雇いの専属ベビーシッター。
起源は貴族やブルジョワの子どもにつけられていた「乳母」とか「ばあや」。
現在は、移民労働者(違法滞在者も含む)の女性が多くにヌヌーとして働いている。

・1987年に、政府は自宅託児手当てを創設。
 0歳から6歳までの子供のために自宅で専属の乳母を雇う場合の補助として、
 社会保障制度の負担金を全額または一部助成するもの。
 自治体公認の「保育ママ」を雇う場合には1990年から全額。