「英国人の74%が自殺幇助を支持」と、このタイミングで世論調査の作為

Times紙がPopulusを通じて行った世論調査
7月17日から19日の間に18歳以上の1504人にランダムに
自殺幇助に関する聞き取り調査を行った。


・ ターミナルな病状の人は医師によって幇助してもらって死なせてあげてほしいとする人が74%も。

・ 自殺幇助合法化を支持する人のうち95%がターミナルな人の自殺幇助を支持。

・ 一方、自殺幇助合法化を支持する人のうち、
 “重症の身体障害”はあるものの、それ以外は健康な人の自殺幇助については
  支持した人は48%のみだった。

・ また、合法化を支持する人のうち、認知症など、
 ターミナルではないが進行性の病気の人の自殺幇助を支持した人は3分の2強。

・ 合法化を支持する人のうち、激しい苦痛のある人の自殺幇助に賛成した人は56%。

・ なお回答者のうち、ターミナルな人の配偶者またはパートナーの自殺幇助に
賛成した人は3分の1のみだった。


かねてより、海外での自殺幇助に付き添う行為を違法としないよう
法の明確化を求めていたMS患者のDebbey Purdyさんを始め、
自殺幇助合法化に向けて運動してきた人たちは、この結果を
世間一般の人が、ちゃんと病状ごとに区別をして安楽死を考えている証左であり
したがって反対の立場が主張する「すべり坂」の懸念を否定するものだ、と。

反対の立場からのコメントは、
緩和ケアが不十分な現状が放置されたまま、
緩和ケアの可能性を知らない人たちが自殺幇助を考えさせられている、と。




しかし……

「ターミナルではないが認知症など進行性の(degenerative)病気」って
それは一体どういう設問の仕方ですか?

その一方で、
「重度の身体障害はあるにせよ、それ以外は健康な人」について問うとは
一体、それはどういう了見ですか?

それは、つまり、
設問段階で「認知障害と身体障害は別」という線引きを
アンケートを実施する側が予め行っていたということ以外のなんでもない。

しかも、さりげなく認知症と身体障害だけを持ち出して、
それは、もしかしたら「認知症など」の側に知的障害もなんとなく含める作為?

それで「ほらね。世間の人はちゃんと障害像によって区別して安楽死を考えている」なんて、
ったく、よく言うよ。

それに加えて、
「身体障害はあるものの、それ以外は健康な人」についての「48%のみ」って……、
それは48%もが「健康だけど体の不自由な人が死にたければ死なせてあげよう」と言ってるのであり、

「ターミナルな人の配偶者の自殺幇助に賛成したのは、3分の1のみだった」も
本当は「3分の1もが」賛成した、ということであり、

それは、どちらも、既に「すべり坂」が起きているってことでしょーが。


この調査そのものが、
Debby Purdyさんの訴訟を受けて上院議会で審議された
法改正案が否決されたことに対する合法化アドボケイト・ロビーの反撃としか思えない。

しかも、その調査のタイミングは17日から19日と、
著名な指揮者夫妻のDignitasでの“幇助心中”
メディアによってセンチメンタルに美化されて、
ここぞとばかりに合法化アドボケイトが議論を盛り上げている最中とくる。

今回の法改正案は
どうせ海外での幇助自殺に付き添う人の行為を合法化しましょうというに過ぎないのだから、

それが否決されたのなら、
いよいよ本丸の自殺幇助そのものの合法化へ向けて、まっしぐら……と。

これから、さぞロビー活動が激しくなることでしょう。