子どもへの抗精神病薬でFDAと専門家委員会が責任なすりあい

去年、Risperdalでの治療を受けた子どもは38万9000人で
そのうち24万人は12歳以下だった。
また多くのケースでADHDの治療として処方された。

しかし、Risperdalの処方はADHDには認可されておらず
それは体重増加、代謝異常、筋チックなどの副作用リスクが大きすぎるため。

もとはといえば、この専門家委員会、
Risperdal とZyprexaの小児科での安全性について
ルーティーン・チェックをするということで開催されたもの。
FDAは席上、
自分たちがルーティーンでモニターしているし
リスクについてもこれまでそれなりに警告もしてきたのだから、
委員会はFDAのやってきたことをそのまま認めてくれればいいと提案した。

ところが委員らは
資料の内容からすれば、ラベルの警告を改善すべきだろう、
それにRisperdal以外の薬 Zyprexa, Seroquel, Abilify やGeodonも気になるぞ、と。

資料の内容とは、例えば
去年、成人へのRisperdalの処方が5%減ったのに対して
17歳以下の子どもへの処方は1割も増加。
小児の処方の大半は精神科医によるもの。

93年から2008年3月までの間に
重大な副作用を起こした子どもが1207人いて、
そのうち31人が死亡。

1人は9歳のADHD児で、
Risperdal療法を始めて12日後に脳卒中を起こして死亡した。
Risperdalの認可外の処方によって死亡した子どもは少なくとも11人。

Use of Antipsychotics in Children Is Criticized
The NY Times, November 19, 2008


この記事、読んでいるとムチャクチャ嫌な気分になるのですが、

FDAとこの専門家委員会の関係というのはきっと
日本のお役所と専門家の審議会の関係なんですね。

それで、昨日ルーティーン・チェックとして予定されていた会議で
FDAが自分たちのやってきたモニタリングを認めてくれればいいといったのは
いわば日本のお役所の審議会で
役人が自分たちで作ってきたペーパーをそのまま了解しろと暗黙に求める慣行と
まったく同じことをFDAが委員会に求めたわけですね。

それって、これまで、それで通ってきたから、ということのはずですが、

記事にもまたBiederman医師の名前とスキャンダルの概要が繰り返されているように
最近やたらと精神科医と製薬会社の癒着が問題になっていて、
特に子どもへの安易な処方が槍玉に上がっているから
委員会としてもこの辺で何か言っておかないと立場上まずくなってきた、
それで、いや、ちょっと待て、と俄かに難癖をつけて
「実は何年も前から懸念していたのだ」みたいなことを言い出した。

FDAも今さら何を言うかと思うから、
「そうはいうけど、Risperdalの長期的安全性の研究なんて誰もやっていないじゃないか」と
言い返す。

さらにFDA
「この問題の解決はFDAにはできない、
薬の副作用については、医学会がもっと医師をちゃんと教育してくれないと」。

もう、なりふり構わぬ責任のなすりあい――。



31人も死んでいるのに。
死なないまでも危険な薬を飲まされた子どもたちがこんなに沢山いるというのに。
“なんでもかんでも薬でお手軽解決”文化の種を蒔いてきた責任だって
双方にないわけじゃないだろうに。