自前幹細胞使い気管支移植に成功(欧)

スペイン、バルセロナの30歳の女性 Claudia Castilloさんに
本人の幹細胞で作った気管支の一部が移植された。

Castilloさんは結核で気管を損傷し、
6月の移植手術がなければ肺を摘出しなければならないところだったが
手術の成功で現在は普通の生活を送っており、
階段を上っても息切れすることがなくなったとのこと。

手術をしたのは英国、イタリア、スペインのチームで
Castilloさんの骨髄から採取した幹細胞を使った。

手順はドナーから提供された気管支の一部から免疫反応を引き起こす部分を取り除き、
7センチのそのグラフトを本人の幹細胞から作った組織で覆って
新しい気管を作った、というもの。

ヨーロッパの研究機関では初のテーラー・メイドの臓器移植。
今のところ拒絶反応も起きておらず、
研究者は同様のやり方で腸や膀胱の移植も可能になる日がくるのでは、と。

喉頭がんの患者に実験室で作ったvoice box を移植する技術は
5年のうちには臨床実験に持ち込みたい、とも。

またチームの英国人研究者の1人は
今回のような移植は20年後には、ごくありふれた手術になっているだろう、
この技術によって外科手術がこれまでとは全く違うものになるだろう、と。

しかし、一方で研究者らは
英国にもこの手術の適応となる患者はいるものの
高価な手術なので広く誰にでもできるというものではないことも認めていて、
もっとコスト・パフォーマンスの良い喉頭の自前細胞による移植手術の研究に
EU内での資金とスポンサーを探している。



前に京都大学の山中教授の対談で
万能細胞から作れるのはまだ2次元の組織のみで、
3次元の細胞はまだまだ遠い先の話だというのを読んだことを思い出して、

今回はグラフトの表面を覆ったという話だとか
応用できる臓器として腸とか膀胱が挙げられていることに
なるほど……と。


それにしても、NHSはもう長いこと破綻の危機に直面しており、
思い切った予算増額が功を奏して一時よりはマシになってきたとはいえ、
医療制度そのものの救命努力が英国政府によって必死に続けられているところ。

20年後に本当に2次元の組織については
自前の臓器移植が「ありふれた手術」になっていたとしたら、
そんな事態は間違いなくNHSを破綻に追い込むんじゃないのか……と思うし、

「将来はこんな先進医療が可能になる!」といった研究者の先走り予告を見聞きするたびに
私はこのミステリーが解けないで悩むのですが、

そんなことになったら一番困るのは
今でも医療費の増大にあえいでいる各国の政府ではないのか……と。