マラリア撲滅も新興テクノロジーによる合成薬で

マラリア撲滅といえば、言わずと知れたBill and Melinda Gates 財団の金看板。
Gates夫妻が最も力を注いでいる分野の1つですが、

マラリアの治療に有効とされているのは
アーテミシニン(住血吸虫薬)とその他の半合成薬剤との併用によるACTと呼ばれる治療法で、
アーテミシニンの原料となるのがクソニンジン。

ところがACTの需要が高まってきたことから
ソニンジンの供給が追いつかなくなることが今後予想されている。

そこでアーテミシニン・エンタープライズ会議2008 なるものが
新興テクノロジーでこの問題が解決できるとの報告書を出した。

この会議のスポンサーは当たり前のことながらゲイツ財団と
国連や世界銀行などが主催するthe Roll Back Malaria Partnership
開催ホストはYork大学。

で、提案されている新興テクノロジーがやろうとしている3つのことが
具体的に何をどうするといっているのか
文系頭の私にはイマイチ確信を持って理解できないのですが、
とりあえず、私の理解のままに以下に。

まずは、1つ目。
York大で新しい農業生産物を作る研究をしているセンターらしい
The Centre for Novel Agricultural Productsが
“ファスト・トラッキングの植物ブリーディング”で
これまでより多くのアーテミシニンが取れる植物を作りだす。

制約が多くて時間がかかるので
遺伝子組み換えはやめてブリーディングにしたのだとか。
(”ファスト・トラックのブリーディング”というのがなんなのか、よく分かりませんが)

2つ目にMedicines for Malaria VentureというNPO
“薬物のような合成アーテミシニン”を開発中。
この実験的な薬で既にマウスのマラリアが治っていて、
来年2月からヒトでの臨床実験が始まる。

3つ目に非営利の製薬会社Institute for One World Healthが
“革新的な化学合成と発酵を組み合わせてアーテミシニンを作っている。
それが成功すれば自然の原料から作るものよりも安価で
ACT療法そのものが安くなり、マラリアに苦しむ地域の人たちにも届きやすくなる。
2011年か2012年には商業生産を開始する予定。

Technology to eradicate malaria
The BBC, November 19, 2008


ゲイツ財団、WHO、世界銀行と新興テクノロジー
そこに絡んでいる製薬会社の名前が One World Health で──。

嫌でもワシントン大学IHME のBurden of Global Diseaseプロジェクトが頭に浮かびます。

そういえばゲイツ氏は9月に国連でマラリア撲滅に1億6800万ドルの資金提供を表明して
満場から大きな拍手を浴びていましたが、
その時にもこんなふうに言っていました。

「我々に必要なのはイノベーション、新たな医薬品、そして
我々が必要とする最もドラマチックなものはワクチン」。

イノベーションと新たな医薬品」という言葉が具現化したものの1つが
このニュースに報じられた新興テクノロジーによる化合薬の開発というわけですね。

ゲイツ財団の巨大資金と新興テクノロジー研究と
国家の頭越しに世界規模で進む、企業経営と同じコスト計算による保健医療施策──。

病気も障害も世の中の「重荷」と捉え
科学とテクノロジーによって効率的に削減していくことだけを目標とする巨大プロジェクト──。