Daily Mailの報道姿勢の不思議

どうしても気になってならない、
Daily Mailの報道姿勢について。

去年10月以降のKatieケース関連Daily Mail記事は以下の4本ですが、



まずタイトルを日本語に訳してみると、

「私が障害のある娘の子宮を外科医に摘出して欲しい理由」

「この母親に障害のある娘の不妊手術が許されるべき理由
 副題: 障害のある我が子を巡る、ある女性の心からの訴え

「この母親が障害のある娘の子宮を摘出して欲しいと望んでいる理由を巡る
頭を下げずにはいられない真実の物語」

そして、

“(障害者)チャリティからのたたきのせいで”
障害のある娘の子宮摘出の母親の要望を医師ら拒絶」


全ての記事が母親Alisonの立場から書かれていることが一目瞭然でしょう。



次に、去年の10月11日の記事の冒頭数行分。

Alison Thorpe の頭はガンガンしている。顔色が悪いのも、明らかに何日も満足に寝ていないためだ。何日もではない、正確には15年間ずっと、である。

彼女の望みはただ1つ、暗い部屋で横になって眠りに全てを忘れてしまうこと。しかし、それはできない。

Katieのような重症障害児を娘に持てば、そんなことはできないのだ。その代わりにAlisonは時計を見ては15歳のKatieを養護学校から連れて帰るタクシーの音に耳を澄ます。

次に彼女の要望が却下されたことを報じる
1月17日の記事の冒頭部分。

1人の母親が重症障害のある娘の子宮を摘出してもらう戦いに敗れた。

Alison Thorpeは外科医らが15歳のKatieの手術をしてくれることを願っていた。Katieは脳性まひで、手術は生理の「苦痛と不快そして尊厳の欠如」を防ぐためのものだった。

しかし、障害者の人権団体は、そんな手術はKatie――歩くことも離すこともできず大小便失禁状態なのだが―――に、不要な苦痛を味わわせることになると主張した。

冒頭からこの問題を
「愛ゆえの母の願い」vs 「それに立ちはだかる障害者団体」という枠組みで
提示しているだけでなく、

障害者の人権団体が批判した理由も曲解されています。


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Daily Mailはhumbling という形容詞がよほど好きなのでしょうか。

ここでは「聞くものが自ずと謙虚な気持ちになる」とか
「(Alisonの労苦と献身に)頭が下がる」といったニュアンスだと思うので、
上記10月11日のタイトルでは仮に「頭を下げずにいられない」と訳してみたのですが、

去年のAshley療法論争の際にも、1月5日の記事で
親のブログをa humbling message posted on the internet と表現しています。


さらに父親から直接話を聞くうちに感情移入したものか、
それともブログの内容に感動したらニュースの文体もこうなるものなのか、

Ashleyが生まれて間もなく、メンタルな能力が一人前になることはなく、生後3ヶ月の心の中に閉じ込められてしまったのだということが痛々しくも明らかに(painfully apparent)なった。

……中略……

何年間か、神経学、遺伝学、見つけられる限りありとあらゆる専門医を胸が張り裂けるような思いで次々に訪ね歩いた後に、static encephalopathyと診断された。

どこから見ても、悲劇的な話である。しかし、本来なら家族のプライベートな苦しみだったかもしれないことが、Ashleyの7歳の誕生日を目前に、広く人々の知るところに押しやられてしまった。

(これでは勝手にプライバシーを暴かれたみたいな書き方ですが、
もともと公開したのは親当人なのですがね。)

そして、この長大なAshley記事も、
紙面のほとんどがAshley父の言葉と言い分に費やされているのです。

その後のKatie記事が誌面の大半をAlisonの言い分に割いたように。


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