ある福祉職のKatieケースを巡る感想

Katieケースについて、あれこれ検索していると、
英国のメディア・サイト、Digital Spy
「医師らは母親の要望どおりに重症児に子宮摘出を行うべきか」
Should doctors give severely disabled girl a hysterectomy at request of her mother?
というフォーラムがありました。

概ね他のサイトで見られるのと同じ賛否両論がここでも繰り返されているのですが、
福祉職の人のコメント(10月8日 コメント#55)が目を引いたので。


成人知的障害者の施設で長年働いてきた人のようです。
この人自身は基本的には、Katieのケースでは子宮摘出も正しいのではないか
との考えですが、

しかし、このようなケースでの倫理上の判断がいかに難しいかについて
特に2つの側面を挙げています。

① 子どもが成人して施設で暮らし始めたり、
親から独立して暮らし始めた後にまで、
子どもの生活は自分がコントロールするものだとの考えを
捨てられない親がいること。

中には肺炎になった息子の治療をやめさせようとした親まで。
死んだ方がいい(本人のためという意味かどうかは不明)という考えで、
そのケースでは法律的な助言を求めることになった。

② 医師は知的障害のある人のことについてあまり分かっていない場合が多く、
それが彼らを巡る決定を複雑にしてしまう。

例えば病院に入院している知的障害者に対して、
もうなすすべもないから栄養の管を抜くとの判断がされた場合に、
その後で本人が(我々に対しては)改善の兆しを示しても
いったん決めた方針は変えようとしない。
このケースではソーシャル・サービスを巻き込まなければならなかった。

この人は上記の2点を指摘した後に、
以下のように書いています。

Mental Capacity Actの導入で
こうした状況は解決しやすくなるでしょう。
その人の同意能力をどのように見極めるべきか、
自分で決定する能力を持たない人の最善の利益は
どのように決めていったらよいのか、
といった点についてガイダンスを提示していますから。

当ブログでも触れましたが、
Katieケースが最初に報じられたのは、
英国の新しい後見法 MCA が全面試行になった直後でした。
英国医師会はガイダンスまで出しています。
そのガイダンスでは裁判所の判断を仰ぐべき事例の中に、
非治療的不妊治療が含まれている。

それなのに

メディアが「親の決定権」だけを軸にこの問題を取り上げ続けていたことが、
ずっと不思議でならない。

今のところ医師からもNHSからも
MCAについての言及はありません。