米国の「死ぬ権利」擁護派の生命倫理学者の夫、生命維持中止を希望し死去
ショックだ……。
1ヶ月前に何の前触れもなくPCがぶっ壊れて
たまたま前の日に3本も書いて寝かせていたエントリーの原稿がオジャンとなる、
という悲惨な体験をした。
たまたま前の日に3本も書いて寝かせていたエントリーの原稿がオジャンとなる、
という悲惨な体験をした。
もちろん今さら、
その時のショックを書きたいわけではない。
その時のショックを書きたいわけではない。
一生懸命に書いたのに消えてしまった幻のエントリーの1本は、
あんまり悔しいので7月23日の補遺でスペースをとって
せめて概要のみを書いた以下の話題だった。
あんまり悔しいので7月23日の補遺でスペースをとって
せめて概要のみを書いた以下の話題だった。
カナダのTayor訴訟やアイルランドのFleming訴訟にもかかわった
「死ぬ権利」擁護派の米ユタ大学の生命倫理学者 Margaret Pabst Battin と
四肢まひの夫との穏やかな「最良の時間」。(ビデオがとても良いです)
自転車事故で四肢まひ、人工呼吸器依存となった夫が死にたいという意思表示していたのに、
Battinは夫が急変した際には救急部に運び込んで救命した。
その後、大学教授の夫は呼吸器をつけたまま講義を再開し、
生きていることを喜びながら暮らしている。
Battin自身も現在の夫婦の生活は2人で過ごした「最善の時」だと語り、
時に夫が痛苦から死にたいと願うことがあるが
「彼が本当に本当にそういうところに至ったと私が確信できるまでは」と。
BioEdgeのCookは「愛され十分なケアを受けられる患者は生きたいと強く、
揺らぐことなく望むようだ。死んだほうがましだと絶望する瞬間はあるが、
実際に死を選ぶ瞬間は決して訪れることはないように思われる」
「自律がそれほど明確な原理なら、このケースではどうして機能しないのだろう?
もし機能しないなら自律原理には一貫性がない。一貫しないなら捨てるべきでは?」。
NYTのビデオでのBattinの静かな語りがとてもいいんだけれど、
ビデオを見ると、夫のRobertさんには24時間体制でプロの介護士が付いていると思われ、
「愛され十分なケアを受けられる」以外に「家族に過剰な介護負担がかからないこと」も
患者が生きたいと願うことができるための条件なのだろうな、とも。
http://www.nytimes.com/2013/07/21/magazine/a-life-or-death-situation.html?hp&_r=2&pagewanted=all&
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10608#comments
「死ぬ権利」擁護派の米ユタ大学の生命倫理学者 Margaret Pabst Battin と
四肢まひの夫との穏やかな「最良の時間」。(ビデオがとても良いです)
自転車事故で四肢まひ、人工呼吸器依存となった夫が死にたいという意思表示していたのに、
Battinは夫が急変した際には救急部に運び込んで救命した。
その後、大学教授の夫は呼吸器をつけたまま講義を再開し、
生きていることを喜びながら暮らしている。
Battin自身も現在の夫婦の生活は2人で過ごした「最善の時」だと語り、
時に夫が痛苦から死にたいと願うことがあるが
「彼が本当に本当にそういうところに至ったと私が確信できるまでは」と。
BioEdgeのCookは「愛され十分なケアを受けられる患者は生きたいと強く、
揺らぐことなく望むようだ。死んだほうがましだと絶望する瞬間はあるが、
実際に死を選ぶ瞬間は決して訪れることはないように思われる」
「自律がそれほど明確な原理なら、このケースではどうして機能しないのだろう?
もし機能しないなら自律原理には一貫性がない。一貫しないなら捨てるべきでは?」。
NYTのビデオでのBattinの静かな語りがとてもいいんだけれど、
ビデオを見ると、夫のRobertさんには24時間体制でプロの介護士が付いていると思われ、
「愛され十分なケアを受けられる」以外に「家族に過剰な介護負担がかからないこと」も
患者が生きたいと願うことができるための条件なのだろうな、とも。
http://www.nytimes.com/2013/07/21/magazine/a-life-or-death-situation.html?hp&_r=2&pagewanted=all&
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10608#comments
ところが、先週のBioEdgeによると、
夫のRobertさんは7月27日に突然気持ちを翻し、
もう明日はいらないから、人工呼吸器を含めて一切のスイッチを切ってくれ、と希望。
夫のRobertさんは7月27日に突然気持ちを翻し、
もう明日はいらないから、人工呼吸器を含めて一切のスイッチを切ってくれ、と希望。
Battinさんは、
You can’t assume that "all choices are alike," she says, "so you have to be alert to what someone deeply wants." She believes "in honoring a loved one’s wishes," she says, her voice dropping, "even if it is painful to you." And, she adds, it is.’
すべての選択が同じようなものだと決め付けてはいけません。だからこそ、
愛する人の望みを尊重するにあたっては
その人が心の奥深くで望んでいることには敏感にならなければならないのです。
たとえ、それがあなたにとって苦痛なことであったとしても。
そして、本当に苦しいことなのですよ、それは。
すべての選択が同じようなものだと決め付けてはいけません。だからこそ、
愛する人の望みを尊重するにあたっては
その人が心の奥深くで望んでいることには敏感にならなければならないのです。
たとえ、それがあなたにとって苦痛なことであったとしても。
そして、本当に苦しいことなのですよ、それは。
ショックだ……。
人の心はこんなにも揺れ動くのだ、ということが。
そして、
そんなにも揺れ動くものである人の心が
一方に大きく振れて、それを口にした時に、
一定の状態にある人では、こんなにも簡単にそれが実現されてしまうのだ、ということが。
そんなにも揺れ動くものである人の心が
一方に大きく振れて、それを口にした時に、
一定の状態にある人では、こんなにも簡単にそれが実現されてしまうのだ、ということが。
2人の姿がNYTに報じられたのは7月17日だった。
その、わずか10日後の出来事だ。
その、わずか10日後の出来事だ。
さまざまに反響もあったろう。
その中には意に染まない、不愉快な反応だって見聞きしたことだろう。
いきなり全国的な(国際的にも)注目を浴び、戸惑いもあったろう。
そんな大きな出来事があって、その余波のさなかにある時には
健康な人間だって気持ちが不安定になるものだろうに。
その中には意に染まない、不愉快な反応だって見聞きしたことだろう。
いきなり全国的な(国際的にも)注目を浴び、戸惑いもあったろう。
そんな大きな出来事があって、その余波のさなかにある時には
健康な人間だって気持ちが不安定になるものだろうに。
介護者であるBattinさんの方だって、
そういう非日常が起こっているさなかのことなら、
日ごろよりもなおのこと心は揺らぎ動いているのだろうに。
そういう非日常が起こっているさなかのことなら、
日ごろよりもなおのこと心は揺らぎ動いているのだろうに。
この結果でもって
これもまた「自律の原理が尊重された事件」ということになるんだろうか。
これもまた「自律の原理が尊重された事件」ということになるんだろうか。
(私なんか日本の片隅で地味な本を1冊出しただけで、
大変な気分の不安定に陥ってしまってるのに。
大変な気分の不安定に陥ってしまってるのに。
仮にも世界のNYTに大きな記事とビデオで出てしまったんだから、
そりゃ、どんな人だって平静ではいられないのが当たり前なんじゃないかなぁ。
そういう非日常でハイになった後には、必ず揺り戻しがくるような気がするし。
そういう非日常時の「もういい、死ぬ」を冷静な判断だと受け止めて
応えてしまって、本当にいいのかなぁ)
そりゃ、どんな人だって平静ではいられないのが当たり前なんじゃないかなぁ。
そういう非日常でハイになった後には、必ず揺り戻しがくるような気がするし。
そういう非日常時の「もういい、死ぬ」を冷静な判断だと受け止めて
応えてしまって、本当にいいのかなぁ)
英国の保護裁判所、知的障害のある男性の不妊手術を許可
英国ロンドンの保護裁判所が
本人の最善の利益だとして知的障害のある男性に精管切除を認めた。
本人の最善の利益だとして知的障害のある男性に精管切除を認めた。
DE本人はこれ以上子どもを持ちたくないと考えているが
知的障害のため、精管切除の意味を理解することができず、同意はできない。
知的障害のため、精管切除の意味を理解することができず、同意はできない。
独立した生活を取り戻すためにも、
本人が望んでいるようにこれ以上子どもを作らないためにも
精管切除は「合法であり、本人の最善の利益」である、と判断。
本人が望んでいるようにこれ以上子どもを作らないためにも
精管切除は「合法であり、本人の最善の利益」である、と判断。
DE側の弁護士は反論を予想して
「優生思想の流れを受けたケースではない」。
「優生思想の流れを受けたケースではない」。
QC(勅撰弁護士)は
このケースは「知的障害のあるほかの人々についてまで
精管切除の適用にOKを出したものとみなされるべきではない」
このケースは「知的障害のあるほかの人々についてまで
精管切除の適用にOKを出したものとみなされるべきではない」
ちょっと違和感があるのは、Mencapから出ているコメントで、
「裁判所はこの男性の最善の利益が何かということについて
慎重にさまざまな事柄を勘案し、その上で
男性がパートナーと愛情関係を続けられるよう
バランスの取れた決定に至った」
「裁判所はこの男性の最善の利益が何かということについて
慎重にさまざまな事柄を勘案し、その上で
男性がパートナーと愛情関係を続けられるよう
バランスの取れた決定に至った」
この記事を読んで、すぐに頭に浮かんだ、とても単純な疑問。
10年来の特定のパートナーがいるなら、
そのパートナーの方がピルを飲むなり、ペッサリーを入れるなり、
侵襲的でない避妊策をとる、という方法ではなぜいけないのか……??
そのパートナーの方がピルを飲むなり、ペッサリーを入れるなり、
侵襲的でない避妊策をとる、という方法ではなぜいけないのか……??
それから特筆しておくこととして、
保護裁判所の審理については以下のどこかのエントリーにもあるように
ずっと非公開が原則となっていたのですが、
メディアが情報公開に向けてキャンペーンを張ったことから
このように公開されるようになったもの。
保護裁判所の審理については以下のどこかのエントリーにもあるように
ずっと非公開が原則となっていたのですが、
メディアが情報公開に向けてキャンペーンを張ったことから
このように公開されるようになったもの。
それ自体は歓迎すべきことと思います。
【関連エントリー】
英国で知的障害女性に強制不妊手術か、保護裁判所が今日にも判決(2011/2/15)
世界医師会が「強制不妊は医療の誤用。医療倫理違反、人権侵害」(2011/9/12)
精神障害者への強制中絶・不妊手術命令を、上訴裁判所が破棄(米)(2012/1/23)
英国の保護裁判所、ダウン症の女性の強制不妊手術を認めず(2013/2/25)
英国で知的障害女性に強制不妊手術か、保護裁判所が今日にも判決(2011/2/15)
世界医師会が「強制不妊は医療の誤用。医療倫理違反、人権侵害」(2011/9/12)
精神障害者への強制中絶・不妊手術命令を、上訴裁判所が破棄(米)(2012/1/23)
英国の保護裁判所、ダウン症の女性の強制不妊手術を認めず(2013/2/25)
A・Owen教授らが論文を発表:「植物状態」の40%に誤診の可能性
ケンブリッジ大からカナダのウエスタン・オンタリオ大に招聘されたA・オウェン教授が
植物状態と診断された患者と脳スキャンを通じてコミュニケーションをとる方法を
研究していることについては以下のエントリーで触れてきましたが、
(23日に出た拙著『死の自己決定権のゆくえ』でも触れています)
植物状態と診断された患者と脳スキャンを通じてコミュニケーションをとる方法を
研究していることについては以下のエントリーで触れてきましたが、
(23日に出た拙著『死の自己決定権のゆくえ』でも触れています)
「植物状態」5例に2例は誤診?(2008/9/15)
植物状態の人と脳スキャンでコミュニケーションが可能になった……けど?(2010/2/4))
Hassan Rasouliさん、「植物状態」から「最少意識状態」へ診断変わる(2012/4/26)
Owen教授の研究で、12年以上「植物状態」だった患者に意識があることが判明(2012/11/13)
カナダの“無益な治療”訴訟で「Owen教授のアセスメントを」(2012/12/8)
Owen教授らの植物状態患者の意識検知に、ベッドサイド簡易法も(2013/3/29)
植物状態の人と脳スキャンでコミュニケーションが可能になった……けど?(2010/2/4))
Hassan Rasouliさん、「植物状態」から「最少意識状態」へ診断変わる(2012/4/26)
Owen教授の研究で、12年以上「植物状態」だった患者に意識があることが判明(2012/11/13)
カナダの“無益な治療”訴訟で「Owen教授のアセスメントを」(2012/12/8)
Owen教授らの植物状態患者の意識検知に、ベッドサイド簡易法も(2013/3/29)
この中の12年11月13日の補遺で拾った
Scott Routleyさんの事例を思われるものを含めた3例について
同大のLorona Naci、Adrian Owenの共著論文がJAMA Neurologyに発表され、
Scott Routleyさんの事例を思われるものを含めた3例について
同大のLorona Naci、Adrian Owenの共著論文がJAMA Neurologyに発表され、
Making Every Word Count for Nonresponsive Patients
Lorina Naci, PhD, Adrian M. Owen, PhD
JAMA Neurology, August 12, 2013
Lorina Naci, PhD, Adrian M. Owen, PhD
JAMA Neurology, August 12, 2013
著者らは
These results suggest that some patients who are presumed to mostly or entirely lack cognitive abilities can have coherent thoughts about the environment that surrounds them.
これらの結果が示唆するのは、
認知能力をほとんど、あるいは完全に欠いているとみなされている患者の中には、
自分を取り巻く状況について一貫性のある思考をすることが可能な人がいる、ということである。
これらの結果が示唆するのは、
認知能力をほとんど、あるいは完全に欠いているとみなされている患者の中には、
自分を取り巻く状況について一貫性のある思考をすることが可能な人がいる、ということである。
2013年8月23日の補遺
今日はまず、
拙ブログで扱っているテーマに興味をお持ちの方に、ぜひとも訪問していただきたい
米国在住のえりさんのブログ「これからどうしようか」をご紹介。
拙ブログで扱っているテーマに興味をお持ちの方に、ぜひとも訪問していただきたい
米国在住のえりさんのブログ「これからどうしようか」をご紹介。
えりさんには
13歳の重症障害のある娘さんを含め、3人の子どもさんがおありです。
13歳の重症障害のある娘さんを含め、3人の子どもさんがおありです。
臓器移植について
http://blog.livedoor.jp/olivia2013/archives/30868639.html
http://blog.livedoor.jp/olivia2013/archives/30950640.html
http://blog.livedoor.jp/olivia2013/archives/30868639.html
http://blog.livedoor.jp/olivia2013/archives/30950640.html
その他、訪問看護サービスを受けるということが親にとってどういうことか、
訪問看護事業所が、訪問ナースが代理母を考えるほどブラック化している実態、
(それでもサービスの量的ベースラインはやっぱり違うと痛感するのだけれど)
訪問看護事業所が、訪問ナースが代理母を考えるほどブラック化している実態、
(それでもサービスの量的ベースラインはやっぱり違うと痛感するのだけれど)
貴重な情報の宝庫でもあり、
また深く考えさせられる問題提起のエントリーばかりです。
また深く考えさせられる問題提起のエントリーばかりです。
――――――
アシスティッド・リビング施設の職員が給料アップを勝ち取った、というProPublicaの報道。アシスティッド・リビングの問題をシリーズでやっている。これもまた、えりさんがブログに書いておられる訪問看護事業所のブラック化につながる話なんだろうと思いながら、読めていない。
http://www.propublica.org/article/workers-win-2-million-settlement-from-assisted-living-giant
http://www.propublica.org/article/workers-win-2-million-settlement-from-assisted-living-giant
日本。派遣労働、拡大を提言 業務別の制限撤廃へ 厚労省報告:これ、上の介護・看護事業のブラック化の話とどうしても重なってしまう。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130821-00000002-asahi-ind
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130821-00000002-asahi-ind
Institute of Medecine of the National Academiesから、患者とパートナーシップを組み意思決定を共同で行うことを提言する報告書。こういうのは、どういう病院の文化や価値意識の中で言われるかによって、どっちにでも転ぶような気も。
http://iom.edu/Reports/2013/Partnering-with-Patients-to-Drive-Shared-Decisions-Better-Value-and-Care-Improvement.aspx
http://iom.edu/Reports/2013/Partnering-with-Patients-to-Drive-Shared-Decisions-Better-Value-and-Care-Improvement.aspx
5月にPASを合法化した米バーモント州に、法律の取り消しを求める動き。
http://www.lifenews.com/2013/08/21/vermont-group-working-to-repeal-assisted-suicide-act/
http://www.lifenews.com/2013/08/21/vermont-group-working-to-repeal-assisted-suicide-act/
ゲイツ財団がテコ入れして全米に普及しつつある全国統一テストを指標とする新しいカリキュラムCommon Coreに関する記事で、ほとんどの国民はこれについて知らないままである、との調査結果。記事は政治と国民の乖離を指摘しているのだけれど、その乖離、教育問題に限らず、また米国に限らず、国民が知らされていない、知らない、知ろうともしていない、という形で共通しているようにも。
http://www.washingtonpost.com/local/education/poll-most-americans-unfamiliar-with-new-common-core-teaching-standards/2013/08/20/ffacc0d6-09b9-11e3-8974-f97ab3b3c677_story.html
http://www.washingtonpost.com/local/education/poll-most-americans-unfamiliar-with-new-common-core-teaching-standards/2013/08/20/ffacc0d6-09b9-11e3-8974-f97ab3b3c677_story.html
そんななか、ミズーリ州で教師たちがIT技術を授業で使いやすく支援するツールの導入がCEE Trustなる企業に委託された。CEE Trustはビル・ゲイツの資金が出ている会社。こうした動向に「鶏小屋にキツネを入れてしまった」と警告する記事。
http://www.huffingtonpost.com/randy-turner/bill-gates_b_3793460.html
http://www.huffingtonpost.com/randy-turner/bill-gates_b_3793460.html
地球温暖化の原因は人間社会、とほぼ結論。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/scientists-nearly-certain-that-humans-have-caused-global-warming/2013/08/20/d6e4a20a-09b8-11e3-b87c-476db8ac34cd_story.html
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/scientists-nearly-certain-that-humans-have-caused-global-warming/2013/08/20/d6e4a20a-09b8-11e3-b87c-476db8ac34cd_story.html
シリア政府が反体制派に向け化学兵器を使用。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/nerve-agents-most-deadly-of-recognized-chemical-weapons/2013/08/21/44e2d7fe-0a81-11e3-8974-f97ab3b3c677_story.html
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/nerve-agents-most-deadly-of-recognized-chemical-weapons/2013/08/21/44e2d7fe-0a81-11e3-8974-f97ab3b3c677_story.html
生命維持を中止するため、自己決定能力ある患者に代理決定者を求めた病院が敗訴(PA州)
裁判所は病院の訴えを認めなったばかりでなく、
こうした主張を行ったことに対して罰則を課した。
こうした主張を行ったことに対して罰則を課した。
無益な治療ブログのThaddeus Popeは、
無益な治療をめぐる係争解決で代理決定権者の任命が有効に機能するには
以下の2点が必要だとしており、
無益な治療をめぐる係争解決で代理決定権者の任命が有効に機能するには
以下の2点が必要だとしており、
・ 患者自身がその治療を特定して求めているときに
代理決定者が生命維持治療の中止に同意することはできない。
代理決定者が生命維持治療の中止に同意することはできない。
・ 患者にまだ意思決定能力がある時には
医療提供者は代理決定者のことは考えるべきではない。
医療提供者は代理決定者のことは考えるべきではない。
これまでも家族が続行を求めているのに
家族とは別途、病院が推薦した弁護士が代理決定者に任命されて生命維持が中止されたケースや、
家族とは別途、病院が推薦した弁護士が代理決定者に任命されて生命維持が中止されたケースや、
州の保護下に置かれた患者で、
本人の意思とは別に代理決定者が任命されて中止されたケースもあったと記憶するので、
本人の意思とは別に代理決定者が任命されて中止されたケースもあったと記憶するので、
(どちらもエントリーはあると思うのですが、
今ちょっと探すだけの余裕がないので、リンクはパス)
今ちょっと探すだけの余裕がないので、リンクはパス)
PA Court Refuses to Appoint Guardian to Override Patient Wishes
Medical Futility Blog, August 21, 2013
Medical Futility Blog, August 21, 2013
精神障害者への医療差別 (米)
これまで、障害者に対する医療差別の問題はいくつかのエントリーで拾っており(詳細は文末にリンク)、
その内容については今回の拙著『死の自己決定権のゆくえ』の第3章でも
「医療と障害のある人々」というセクションを設けて紹介していますが、
その内容については今回の拙著『死の自己決定権のゆくえ』の第3章でも
「医療と障害のある人々」というセクションを設けて紹介していますが、
8月10日のNYTに「医師が差別するとき」と題して
精神障害者が医師の差別意識によって十分な医療を受けることができていない問題を
双極性障害の当事者で作家のJuliann Gareyさんという人が書いていました。
精神障害者が医師の差別意識によって十分な医療を受けることができていない問題を
双極性障害の当事者で作家のJuliann Gareyさんという人が書いていました。
Gareyさんが初めて体験したのは耳鼻科でのこと。
耳の感染症で生まれて初めての痛みを経験して受診すると、
双極性障害の治療で飲んでいる薬の一覧を見た医師はカルテを閉じて
「これでは何も処方する気にならない。こんなにあれもこれも飲んでいたんでは」と言い、
タイレノール(薬局で買える一般的な鎮痛剤)なら飲んでも大丈夫だろう、で、診察を終了。
翌日、鼓膜が裂け、生涯に及ぶ聴覚障害が残った。
耳の感染症で生まれて初めての痛みを経験して受診すると、
双極性障害の治療で飲んでいる薬の一覧を見た医師はカルテを閉じて
「これでは何も処方する気にならない。こんなにあれもこれも飲んでいたんでは」と言い、
タイレノール(薬局で買える一般的な鎮痛剤)なら飲んでも大丈夫だろう、で、診察を終了。
翌日、鼓膜が裂け、生涯に及ぶ聴覚障害が残った。
また初めて受診した胃腸科では、診察台に横になっていると、
医師は服薬中の薬のリストを見て、Gareyさんの顔の前で指を振り
「あなた、気持ちの方をどうにかしたほうがいいわよ。そうじゃないと胃は治りっこないですよ」
医師は服薬中の薬のリストを見て、Gareyさんの顔の前で指を振り
「あなた、気持ちの方をどうにかしたほうがいいわよ。そうじゃないと胃は治りっこないですよ」
重症の精神障害のある人は「正常な」人に比べて
受けている医療の質が低いという研究が少なくとも14ある。
WHOも去年、精神障害者へのスティグマと差別を「隠れた人権侵害の緊急事態」と称した。
こうした医師による差別にはちゃんと名前があって、diagnostic overshadowing というんだそうだ。
受けている医療の質が低いという研究が少なくとも14ある。
WHOも去年、精神障害者へのスティグマと差別を「隠れた人権侵害の緊急事態」と称した。
こうした医師による差別にはちゃんと名前があって、diagnostic overshadowing というんだそうだ。
(日本語にしてみると、なんだろう? 診断差別? 偏向診断? 思い込み診断?
なんか、どれもうまく感じを掴めてない気がする……)
なんか、どれもうまく感じを掴めてない気がする……)
一方では、こうした精神障害のある人は
何らかの慢性的な身体症状があることが多いのだけれど、
これでは受診が必要なときでも医師にかかろうとしないのも無理はなく、
結局、多くの人がぎりぎりの状態でERの世話になることに。
何らかの慢性的な身体症状があることが多いのだけれど、
これでは受診が必要なときでも医師にかかろうとしないのも無理はなく、
結局、多くの人がぎりぎりの状態でERの世話になることに。
著者は偏頭痛でERに駆け込んだ際にやはり同じ誤解をされて、
生理的食塩水の点滴程度でごまかされたことがあった。
その後、専門医を受診した際にも一方的にコカイン中毒者だと決め付けられた挙句に、
精神症状が身体にでるヒステリー症状を呈していると診断された。
生理的食塩水の点滴程度でごまかされたことがあった。
その後、専門医を受診した際にも一方的にコカイン中毒者だと決め付けられた挙句に、
精神症状が身体にでるヒステリー症状を呈していると診断された。
2006年にthe National Association of State Mental Health Program Directorsが
取りまとめた調査結果報告書によると、
重症の精神障害があって公的医療を受けている人は、精神障害のない人よりも25年も早く死んでいる。
取りまとめた調査結果報告書によると、
重症の精神障害があって公的医療を受けている人は、精神障害のない人よりも25年も早く死んでいる。
もちろん早くに死んだ人の30~40%は自殺者だけれど、
それでも60%は予防可能あるいは治療可能な病気で亡くなっている。一番多いのは心臓血管疾患。
それでも60%は予防可能あるいは治療可能な病気で亡くなっている。一番多いのは心臓血管疾患。
上記報告書はいくつかの提言をしており、
精神障害者を優先度の高い患者群とする、精神障害者のメンタルな医療と身体の医療とを協調・統合する、
医療職と患者双方への教育、身体病医療へのアクセス改善と、適切な予防・検査・治療サービス保障など。
精神障害者を優先度の高い患者群とする、精神障害者のメンタルな医療と身体の医療とを協調・統合する、
医療職と患者双方への教育、身体病医療へのアクセス改善と、適切な予防・検査・治療サービス保障など。
報告書の7年間で何の変化も起こっていないが、このところ出てきた動きとして、
いくつかの主要な大学の医学部で、「医療ヒューマニティー(the medical humanities)」と称し、
視覚芸術、ヒューマニティ、音楽、科学など多様な領域を導入して
医学生たちの患者に対する考え方を変える試みが行われている。
いくつかの主要な大学の医学部で、「医療ヒューマニティー(the medical humanities)」と称し、
視覚芸術、ヒューマニティ、音楽、科学など多様な領域を導入して
医学生たちの患者に対する考え方を変える試みが行われている。
医療職と患者のあいだには溝があるとの前提に立ち、
カルテに書いてあること情報を見るだけでなく、患者の話を傾聴するように、というもの。
カルテに書いてあること情報を見るだけでなく、患者の話を傾聴するように、というもの。
プログラムの説明には以下のように書かれている。
「効果的な医療には、他者の物語と苦境を理解し、
受け止め、解釈し、それに基づいて行動することが求められます。
ナラティブ能力を伴って行われる医療こそが、人間的で効果的な医学実践のモデルなのです」
「効果的な医療には、他者の物語と苦境を理解し、
受け止め、解釈し、それに基づいて行動することが求められます。
ナラティブ能力を伴って行われる医療こそが、人間的で効果的な医学実践のモデルなのです」
記事の著者は、
こういうプログラムがあって初めて「まず、害することなかれ」という医療が
すべての患者に向けられる、精神障害者にも向けられるようになる、と結びに書いていて、
それ自体には同意なのだけれど、ナラティブ・メディスンが新たな取り組み……??
こういうプログラムがあって初めて「まず、害することなかれ」という医療が
すべての患者に向けられる、精神障害者にも向けられるようになる、と結びに書いていて、
それ自体には同意なのだけれど、ナラティブ・メディスンが新たな取り組み……??
【関連エントリー:英国】
「医療における障害への偏見が死につながった」オンブズマンが改善を勧告(2009/3/31)
オンブズマン報告書を読んでみた:知的障害者に対する医療ネグレクト(2009/3/31)
Markのケース:知的障害者への偏見による医療過失
Martinのケース:知的障害者への偏見による医療過失
「NHSは助かるはずの知的障害者を組織的差別で死なせている」とMencap(2012/1/3)
助かったはずの知的障害児者が医療差別で年間1238人も死んでいる(英)(2013/3/26)
【拡散希望】知的障害のある人への医療差別(Mencap作成のビデオ)(2013/5/1)
Mencap「知的障害者への医療差別をなくす憲章」(2013/5/1)
「医療における障害への偏見が死につながった」オンブズマンが改善を勧告(2009/3/31)
オンブズマン報告書を読んでみた:知的障害者に対する医療ネグレクト(2009/3/31)
Markのケース:知的障害者への偏見による医療過失
Martinのケース:知的障害者への偏見による医療過失
「NHSは助かるはずの知的障害者を組織的差別で死なせている」とMencap(2012/1/3)
助かったはずの知的障害児者が医療差別で年間1238人も死んでいる(英)(2013/3/26)
【拡散希望】知的障害のある人への医療差別(Mencap作成のビデオ)(2013/5/1)
Mencap「知的障害者への医療差別をなくす憲章」(2013/5/1)
【関連エントリー:米国】
障害者の人権を侵害する医療への痛烈な批判: NDRNの報告書「まえがき」(2012/6/22)
障害者への医療の切り捨て実態 7例(米)(2012/6/26)
NDRN報告書:概要(2012/7/7)
NDRN報告書:WI州の障害者への医療切り捨て実態 2例(2012/7/9)
NDRN報告書: A療法について 1(2012/7/13)
NDRN報告書: A療法について 2(2012/7/13)
NDRN報告書:カルメンの強制不妊ケース(2012/7/14)
NDRNのCurt Decker、"アシュリー療法“、障害者の権利、医療と生命倫理について語る(2012/7
NDRN報告書: 提言(2012/8/2)
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『死の自己決定権のゆくえ』注:URLリンク一覧
『死の自己決定権のゆくえ』 注
各章の注に挙げられた URLリンク一覧はこちらです ↓
注のURLについては
校正時にリンク切れになっていたものは
すべて同種の情報を探して置き換えましたが、
その後リンク切れが生じている可能性があります。
その点、ご了承ください。
校正時にリンク切れになっていたものは
すべて同種の情報を探して置き換えましたが、
その後リンク切れが生じている可能性があります。
その点、ご了承ください。
また、ハイライトになっている部分が
こちらでの訂正・追加の箇所です。
こちらでの訂正・追加の箇所です。
――――――
それから、さっそく見つかった訂正を以下に。
p.21の2行目
「家族に介護負担をかけている」の箇所を
「家族に介護負担をかけていると感じている」に。
「家族に介護負担をかけている」の箇所を
「家族に介護負担をかけていると感じている」に。
原稿を勢いに乗って書き進めることに必死で、
余裕のなさから、うっかり心無い表現になっていました。
余裕のなさから、うっかり心無い表現になっていました。
お詫びして、訂正いたします。
今後も訂正の追加が出てくると思いますので、
その時には改めて訂正のエントリーを立てますが、
とり急ぎ、ここに。
その時には改めて訂正のエントリーを立てますが、
とり急ぎ、ここに。