イラクとアフガニスタンの米軍で働く民間派遣要員の死者数3000人超

堤未果の「ルポ貧困大国アメリカ」を思い出す記事がProPublicaに――。

思いだすのは、例えば、
08年に読んだ時のエントリーで以下のように書いたこと。

詐欺同然の口車で軍にリクルートしては真っ先にイラクの前線に送り込む恐ろしいカラクリ。

貧困が徴兵装置として機能する格差社会。不法移民も貧困層も兵士として使い捨てにする分にはまだしも使い道があるといわんばかりに。

しかも戦争まで民営化されて民間の会社が“社員”を雇って“派遣”するのだから、国には責任は全くないし、給料だって条件だって無法地帯みたいなもので、どんなに非人間的な条件であろうと不満があれば辞めればいい、それ以外に生きていけないからやるという代わりの人間はいくらでもいる、と。まさに「使い捨て」。

宅配ドライバーさんと「ルポ貧困大国アメリカ」(2008/4/8)


これを思い出させられたのは、

そんなふうにイラクへの戦争要員を派遣している民間の警備会社が
「労働者」30人が死んだことを法で定められている通りに迅速に報告しなかったとして、
国労働省から75000ドルの罰金を科せられた、という7日のニュース。

The Sandi Group という
ワシントンDCに本部を置く民間企業の「従業員」が
03年から05年の間にイラクで働いている間に「殺された」ことが迅速に報告されなかった。

(”殺される be killed”という表現そのものは、英語では
事故など、自然な死に方でない場合には普通に使われているものですが
ここで言われる「労働者」「従業員」の方々の死に方が
普通の事故死ではなかっただろうことも
また容易に想像されるわけで……)

Sandi Goup は05年以降、
少なくとも米国政府から8090万ドルの契約を請け負って
多くのイラク人をセキュリティ・ガードとして雇っているという。

米国政府はイラクアフガニスタンの戦争地域で働いている派遣企業の民間人に
医療費や死亡保障などを労災として提供する事業を作ってはいるものの
ProPublicaは一連の報道で、その不備を指摘してきたところ。

多額の税金がその事業につぎ込まれているというのに
派遣会社は支払いを渋るのが常で、特に外国人社員には
何の補償も受けられていないケースが多い。

そうした報道を受け、
国労働省は派遣要員の死傷者数の公開を始め、
派遣企業がそれらを報告する迅速さを評価するようになった。

今回のSandi Groupへの罰金も、
そうした派遣企業への規制強化の一環と見られる。

昨年12月段階で、
イラクでの派遣要員の死者は 3,258人。
負傷者は 9万人。