認知症が進んだ人の胃ろう、利益と害の検証が不十分

認知症が進行した人への胃ろうは
果たして利益と害のいずれが大きいのか、
この問題について書かれた医学論文を広範に検証した
Cochrane レビューによると、

認知症の進行した患者への経管栄養の
延命効果についてもQOLの改善効果についても
研究エビデンスは見つからなかった。

それどころが、研究の中には
意図された効果の逆に死亡率を上げたり、
病状を悪化させ、QOLを低下させたと思われるものもある

その理由として挙げられているのは
体が食べ物を取り込み利用するメカニズムが複雑で
認知症の形態によっては、食べ物を取り込むメタボリズムが機能していない可能性もあるため。

また終末期の患者では、すでに消化系統が機能を停止しているため
経管栄養が却って本人の負担になっている場合もある。

ガンの末期などで飢餓感のある人には、ちょっと水分を取らせてあげたり
痛み止めの処方で楽になることもある。

私が個人的に「ああ、なるほど、いかにもな話だなぁ」と思ったのは、以下の指摘で、

胃ろう技術は1980年代に
重篤な病気の子どもが体力を回復するまでの一時的な処置として登場したのだが、
いったん使われるようになるや、コスト効率のよい手段として
食事介助の人手が足りないナーシング・ホームで急速に普及した。

しかし、たとえ進行した認知症であっても
その選択は決して「胃ろうか、または何もしないか」ではなく
太古の昔から使われてきた「介助による口からの食事(asssited oral feeding)」という方法がある。

アップルソースなどの柔らかい食べ物や、ちょっとした水分など、
その人が無理なく摂取できるものを、手伝って口から食べさせてあげる。
ナーシングホームにいる人にでも、家族がちょっと顔を出しては
ほんの30分程度の時間、そうして口から何かを食べさせてあげることが望ましい。

最も人道的なのは介助で口から食べさせてあげることである。
私の考えでは、そこには、ほとんど崇高といってもいいものがある」と
Stony Brook 大学の予防医学の教授 Stephen Post氏。

また、経管栄養となった認知症末期の患者の71%が拘束されている、など、
今回のCochraneレビューでは経管栄養と拘束の間に大きな相関があることも指摘されている。

Review: Do Feeding Tubes Help Or Harm In Advanced Dementia?
The Medical News Today, April 15, 2009


コクラン共同計画の日本語サイトはhttp://cochrane.umin.ac.jp/publication/cc_leaflet.htmこちら