「貧困国はワクチン接種した子どもの数を水増ししている」とIHME論文


発展途上国がこれまでGAVI(ワクチン予防接種世界同盟)に申告してきた
接種済みの子どもたちの数は大幅に水増しされたものであり、
実際はこれまで言われてきた半分のペースでしか接種率が上がっていないことが判明。

IHMEの長官、Dr. Christopher Murrayらが
3種類の予防接種について1986年から2006年までに193カ国で受けた子どもの数を洗いなおしたところ、
国によっては実数の4倍、5倍という水増し報告をしていたケースも。

その背景には
ベースラインとする年よりも接種済みの子どもの数が増加した国に対して
その増加分について一人あたり20ドルをその国の政府に支給するGAVIのインセンティブ支払い制度。

GAVIでは、この調査結果を受け、
来年早々にもインセンティブ支払いシステムを更改する、と。

Dr. Murrayは
「今後、世界の保健医療の改善のために追加資源が投入されるに当たり、
資源の使われ方は正確に追跡する必要がある。
資金提供を受けるためには今後は独立した検証可能な計測が求められる」

Number of Children Immunized Has Been Inflated for Years
The Washington Post, December 12, 2008



WPの記事には
GAVIがそもそもGates財団からの75000万ドルを基に作られた機関であり、
この調査を行ったWashington大学のIHMEもまた
Gates財団の巨額の資金によってできた機関であることを
「皮肉なことに」と評していますが、

皮肉どころか、この話、要するに、

「子どもたちにワクチン広めたい」と貧困国政府にゼニでプレッシャーをかけ、
思い通りの成果が出ているのかと思っていたのだけれど、
どうやらそのゼニを騙し取られているみたいで
やれということの方はちゃんとやっていないらしい気がするから
IHMEに調べさせてみたら、やっぱり……。

ムカつくから、今度から正確に申告しないとゼニはやらないぞ、と
ついでにIHMEの長官に言わせてしまった……という話なのでは?

IHMEの長官がどうしてGAVIという別組織のゼニの支払い条件を
こんなふうに云々できるのか、とても不思議なのだけれど
もしかしたらIHMEの研究者もGAVIの職員も、
みんなGates財団のスタッフという意識でものを言っているのかもしれないし。

なにしろ、Gates夫妻が最も力を入れている子どもへのワクチンの普及状況がテーマ。
しかも、この論文、発表されたのは
IHMEの創設と同時に提携関係を発表し
LancetはGates財団に買収されたのか」と揶揄された Lancet誌──。

皮肉どころか、
Gates財団の保健医療関連資金の使い道については
IHMEが警察機能を担って取り締まりますよ、という、たいそう怖い話?

もともとIHMEは今後の数年間で
コスト効率で科学的に分析しなおして世界中の保健医療施策の”通知表”を作ると言っているのだから
Gates財団の資金が流れているかどうかとは無関係に
世界中の保健医療資源の警察官を自認しているんでしょうか。

一体ナニサマだと思ってんだか分からないけど。


(コスト効率計算によって世界の保健医療施策の見直しを図ろうとする
Gates財団とワシントン大学、IHME、Lancetの繋がりについては
ゲイツ財団とUW・IHME」の書庫に上記リンク以外にもエントリー多数)

この件に関するIHMEのニュース・リリースはこちら