ゲイツ財団のメディア・コントロール

9月17日の補遺
Guardian紙に Global Development というコーナーが新設され、
そのコーナーがGates財団とのパートナーシップによるものだということについて
「小さな国家並みのお金を動かすことのできる一民間団体が
WHOと組み、Lancetと組み、いくつもの研究機関を私物化し、
またはその資金源となりパートナーとなり、またGuardianと組み……。
この状況に問題を感じる人がどうしてこんなに少ないんだろう?」と書いた。

9月24日の補遺では
Bill Gatesと Warren Buffetが新興富裕層を慈善に誘うべく中国に赴くというニュースに、
「世界中の超富裕層が手を結んでいくのは、
本当にみんなで拍手を送るようなことなんだろうか」と書いた。

そしたら、なんと、以下のブログ記事によると、

Bill Gates and Media Control
A New World Order Out or Chaos (News Page), October 17, 210


ゲイツ財団は Guardian だけではなく ABC とも、
グローバル・ヘルス関連プロジェクトでパートナーシップを組んだのだそうな。

つまり、プロジェクトを介してゲイツ財団から、これら大手メディアにゼニが渡る、ということ。

ABCのプロジェクトは1年ものの企画で、
ABC側が450ドル、ゲイツ財団は150万ドルを出すとのこと。

Guardianは以前にも地球温暖化で独自にキャンペーンを張ったことがあって、
今回、国連のミレニアム開発目標MDG)の達成に向けたキャンペーンとして、
似たような企画と見えなくもないけど、

これまでのキャンペーンでスポンサーがついたことはなかったし、
ニュースのセクションに位置づけられたこともなかった。
今回は堂々とニュース・セクションの中に置かれている。
これでは、ジャーナリズムとしてのキャンペーンなのか、
アドボカシーとしてのキャンペーンなのか区別がつかないだろう、と。

上記ブログは、どうやらコテコテの陰謀説のサイトのようだから
その点はちょっと要注意ではあるけれど、このポストに書かれていることは納得できる。

というか、この人がここで書いていることは、
当ブログがここ数年追いかけてきた情報にそのまま重なるし、
この人の懸念も当ブログが書いてきたことそのものだ。
(詳細はこの書庫のエントリーまたは文末のリンクへ)

もっとも、IHMEすなわちゲイツ財団がLancetと既に提携関係にあることには
この著者は、まだ気づいていない模様。

気付かないまま、Lancetの財団に関する発言のアヤシサを指摘している。
また、医療関係の情報筋として権威あるKaiser Family Foundationでも
既にゲイツ財団に関連した報道には偏向が見られることも指摘している。

Kaiser自体がもともと医療分野に大きな利権を持った財団だと私は思うので、
その辺りで偏向していないことを期待するのは最初から違うんじゃないかとは思う。

その証拠に5月に行われた母子保健に関するシンポは
LancetとIHMEが共催し、Kaiser Family Foundation にて開催。

その際、
批判を封じるために手の込んだ演出をしたIHMEのやり方があまりに汚かったので
このシンポには非難がゴウゴウだったとか。

The Economist誌からそのシンポに出席した記者は
同誌の記事で以下のように書いているとのこと。

As the old saying among bureaucrats goes, he who controls the numbers commands the power. With luck, that control is passing to people who are getting the numbers right.

官僚の間で昔から言われているように、数字を支配するものが権力を握る。願わくば、その支配が数字の捉え方を間違えることのない人間たちに渡らんことを。

このブログ記事の著者は、
当ブログと同じように、IHMEの資金源がゲイツ財団であることを指摘し、
その数字による支配・権力がなんのことはないゲイツ財団の手に渡っていく可能性を警告。

以下のように結論している。

Increasingly, the measurement and coverage of global health are funded by the Gates Foundation in a closing loop while, correspondingly, the capacity for objective assessment is shrinking.

グローバル・ヘルスに関する情報の数値化にも報道にもゲイツ財団からの資金がどんどん膨らんでいる。

そうした連携の包囲網によって客観的なアセスメントが出来なくなりつつある。


GuardianがGates財団とのサイトの立ち上げについて出したプレス・リリースは以下。
この中でニュース&メディア局の編集長は次のように語っている。

it is essential to have a place where some of the biggest questions facing humanity are analysed and debated, and through which we can monitor the effectiveness of the billions of pounds of aid that flows annually into the developing world.

人類が直面する最も大きな問題の一部を分析し議論するための場所が不可欠であり、そういう場所があることによって我々は毎年途上国へ流れ込んでいる巨額の援助の効率性をモニターすることができる。


つまり、今回のGuardianのグローバル・ヘルス・プロジェクトの目的は、
世界の病気や障害の「負担」を数値化し、
グローバル・ヘルス施策にコスト効率で見直し“黄金律”を作るというIHME
全く同じだということですね。

すなわち、

死亡率に障害も加えて医療データ見直す新基準DALYによって、
この障害のある生は障害のない生よりも○割引きで、というコスト効率で――。

「健康で5年しか生きられない」のと「重症障害者として15年生きる」では、どっちがいい?
誰にも選べないことを、さも選べるかのように質問して、それを調査と称し
障害のある生は生きるに値しないと結論付けるためのエビデンス
仕立て上げてしまおうと画策すること――?


(注)文中、ゴチックはすべてspitzibaraによるものです。