医師らの論文にはマヤカシがある その2

 引き続き、論文のおかしな点について。

F?鴫蠅寮攴釮砲弔い討蓮一切触れられていない。

 この点は既に多くの人が指摘しているところですが、論文は乳房芽については一切触れていません。倫理委員会の検討について書かれた一説でも、倫理委員会は「成長抑制と子宮摘出術の要望はいずれも、この症例については倫理的に妥当とのコンセンサスに至った」と書かれて、乳房芽の切除を省いています。もちろん書き忘れたわけではないでしょう。

 ところで、アシュリーの両親はブログの中で「担当医にとっても病院内の倫理委員会にとっても、一連の処置の中で最も判断が難しかったのが、この乳房芽の切除だった」と書いています。さらに、乳房芽の切除でどんな利点があるかを述べた後で、「上記の利点を詳しく説明することで私たちは彼ら(担当医や倫理委のメンバーを指す)のreluctanceを乗り越えた」とも書いています。アシュリーの親は倫理委員会の会議の冒頭でパワーポイントを使ってプレゼンを行っているので、その際に特に乳房芽の切除については利点を力説したのでしょう。それでようやく説得できた、というニュアンスです。

 また5月8日のWPASの調査報告書に添付されたExhibit L(アシュリーの症例を検討した倫理委の報告書)にも、話題になった点の1つとして「乳房切除がどのようにQOLに結びつくのか」という問題が挙げられています。

 病院サイドはホルモン療法による身長抑制と子宮摘出についてはともかく、乳房芽の切除には最後まで倫理的な問題を感じて躊躇していたことが想像されます。論文で乳房芽の切除が伏せられていることと無関係ではないでしょう。

 さらに論文執筆者の1人Deikema医師はメディア報道が沸騰した直後の1月11日と12日に立て続けにCNNに登場した際に、非常に興味深い発言をしています。
 11日に放送されたインタビューでは「2004年にアシュリーに行われたことを説明してください」という質問に対して、成長抑制と子宮摘出の2つについてのみ答え、やはり乳房芽の切除については触れていません。ところが翌12日に「ラリー・キング・ライブ」に衛星中継で生出演した際には、キングに「何が行われたのですか」と問われ、ちゃんとホルモン療法、子宮摘出、乳房芽の切除の3つについて答えているのです。
 内容だけではなく、答え方も微妙に変わっています。11日の答えは「成長抑制は……子宮摘出は……」と処置の方法について説明する形をとっているのに対して、12日の答え方では3つの処置全てについて「両親が求めたのは……」という表現を使っているのです。もちろん乳房芽の切除についても「そして最後に両親は乳房芽が切除されるよう求めました」と言っています。

 人間の無意識というのは興味深い作用をするものです。両親に責任を転嫁する表現を選択させたのは、Deikema医師の中のいかなる無意識だったのでしょう……?