化学薬品業界が政府の発がん物質報告書の予算カット狙い、ロビー活動

ホルムアルデヒドといえば、宮部みゆきの「名もなき毒」を思い出すけれど、

よく考えてみたら、2010年に以下のエントリーを書いているんだった ↓
大統領がんパネルが「化学物質はやっぱりヤバい」(米)(2010/5/10)


今回のNYTの記事も上記と同じくNicholas Kristofが書いたものなのだけれど、
なにしろタイトルが「がんロビー」

最初のセンテンスが
「発がん物質にワシントンで活動するロビー要員がいることを
誰が知っていただろうか」であるように、

単に化学物質の発がん性を指摘する記事ではなく、
こうした政府の科学者らによって発がん物質が公表される動きに対して
化学業界がロビー活動によって制約を加えようと画策していることへの批判。

特に化学業界の危機感をあおったのは、

米国国立衛生研究所NIHが2年ごとに出している発がん物質に関する報告書で
それまで発がん性の可能性ありとしてきたホルムアルデヒドについて
2011年に発がん物質であると断定したことと、

その他にも、
スチレンにも発がん性の可能性が高いと指摘したこと。

そこで Exxon Mobil, Dow, BASF, DuPontなどのBig Chem企業が
発がん物質に関する報告書の予算を削減させようと
下院議会に対してロビー活動を行っている、という。

これに対して、先月76人の科学者らが会員議会に手紙を書いて
WHOでもホルムアルデヒドは発がん物質のリストに加えているし、
スチレンも発がん性の可能性がある物質とされているので、
この度の報告書は国際的な科学的コンセンサスに沿ったものだと説いた。

ジョージ・ワシントン大学の公衆衛生学部の学部長は
「自由市場は消費者が情報を手に入れることで機能するというのに
彼らはその情報をつぶそうとしている」

Kristofは

より大きな問題は、連邦政府が国民の健康の番犬となるべきか、それとも企業のポチとなるべきか、だ。

はっきりさせておこう。毒性のある化学物質については不透明なところはあるから、発がん物質に関する報告書を批判することになんら問題はない。しかし、報告書の予算をなきものとしようとするこの試みは、科学と民主主義の双方への侮蔑である。


the Cancer Lobby
Nicholas D. Kristof
NYT, October 6, 2012