経済危機で臓器の闇市、アジアからヨーロッパへ拡大

これまで
中国、インド、ブラジル、フィリピン辺りが通り相場だった臓器のブラック・マーケットが
ヨーロッパの経済危機でギリシャ、スペイン、イタリア、ロシア、
それからセルビアなどのバルカン諸国へと広がっている。

腎臓から髪の毛、精子、母乳まで
ありとあらゆる人体パーツを売ります、という広告が
そうした国々の人々によってインターネットに出されており、
中には肺を250,000ユーロで買ってください、というものも。

最近では、こうした動向は米国にも及び、
不法滞在の移民が糊口をしのぐためにネットを通じて腎臓を売るケースが
複数、明らかになっているという。

専門家によると、そうした中、組織犯罪グループが、
慢性的貧困に苦しむ弱者と、何としても助かりたい富裕な患者の両者を
共に餌食にして肥え太ることとなっている、と。

例えばセルビアでは臓器売買は他国と同様に
10年以下の懲役刑にあたる違法行為だが、
腎臓移植の必要な人3人に1個の移植腎臓しかない(昨年のデータ)とあって、
ネットを通じて患者と貧困層のドナーを仲介するブローカーが暗躍。

腎臓1個につき10万ユーロ、プラス必要経費。

Organ Watchというカリフォルニア州に本部を置く人権組織は
世界中で違法に売買されている腎臓は年間15000から2万個と推計しており、
国連でも腎臓移植に使われる5~10%は売買されたものだとしている

EUの特別検察官は、
最近までヨーロッパの売買のハブはトルコで
移植ツーリズムにやってくるのは米・英・仏・伊・独・イスラエルの患者だった、と。

記事で紹介されているケースでは、

セルビアの50代の夫婦が
パンとサラミだけの食事を一日一回だけしか食べられないところまで追いつめられて
もはや腎臓を売る以外に飢えを避ける道はないとネットに広告を出した。

46歳のギリシャのビジネスマンの男性が
家族みんながホームレスにならないためにはこれしかないと、
腎臓を売りに出し、買い手を見つけるために探偵まで雇った。

セルビア南部の町 Doljevacの失業率は50%で、
ある主婦が臓器売買ネットワークを立ち上げると、3000人以上が登録を希望。
しかし非合法のため政府が認めず、彼らは今では近隣諸国へ行って売ろうとしている。

セルビア政府が臓器を売らなければならないほど自国民は食い詰めていないと主張する一方、
同国の警察は過去10年間に臓器売買のケースを起訴したことが一度もないし、

ベルグラードの著名な腎臓専門医は
移植腎臓は病院の委員会で精査されているので
違法な売買がセルビアで行われているというのは信じがたいと言うが、

工場の仕事を失った後に裕福な地元の政治家に腎臓を「あげ」て、
お礼にその人の会社に雇ってもらい医療費を出してもらったと証言する
セルビア南部の52歳の男性は、ドナーカードなど偽造書類で兄弟を装って
ベルグラードの公立病院で腎臓摘出を行った、と語る。

記事冒頭で紹介されているセルビア人夫婦の夫は
無料の教育と障害の仕事が保証されて腎臓売買なんて聞いたこともなかった
ユーゴスラビア時代を懐かしみながら、

「この国の人々が臓器を売るようなところまで追いつめられるなんて恥辱。
もっとひどい不況の時ですら、臓器を売れるなんて考えたこともなかった」