臓器マーケットの拡大で、貧困層への搾取が横行(バングラデシュ)

バングラデシュ出身の文化人類学者(ミシガン州立大学
Monir Moniruzzaman氏は、1年以上、母国の闇・腎臓マーケットに潜入し、
腎臓を売った人33人のケースを調査。

貧困層搾取の実態を
Medical Anthropology Quarterlyに報告した。

33人の多くは、倫理観など持ち合わせないブローカーに言いくるめられて
インドとの国境を越えてゆき、医療機関で初めてレシピエントと顔を合わせたという。

レシピエントは、だいたいバングラデシュ生まれで外国籍を持ち
米国、ヨーロッパ、中東に住んでいる富裕層だという。

臓器売買は違法行為であるため、
両者が姻戚関係にある家族間の臓器提供であるよう装って
ブローカーが偽造書類を用意しているし、

医師も病院関係者も製薬会社も違法行為だと知りながら
自分たちにも利益になることだから見て見ぬふりをしている。

Moniruzzaman氏は
「これは貧困に苦しむ人たちへの酷い形態の搾取です。
貧しい人たちの臓器が、わずかな富裕層の寿命を延ばすための
市場の商品となっている」と語り、

過去30年間の医療技術の進歩によって
人類の歴史にかつて見られたことのない、おぞましい搾取が行われている、と。

78%が1日2ドル以下の暮らしを送るバングラデシュでは
腎臓1つが1400ドルになるなどと謳う広告が多数目につき、

生活のために腎臓や肝臓の一部、角膜を売る人もいる。

しかし腎臓を売った人たちは
当初約束された金額の一部しか支払われることなく、
その後は深刻な健康被害によって働くこともできず、
自分がしたことを恥じて、抑うつ状態に陥っているという。

実際には腎臓や肝臓が一体どういうものなのかを知らないままに
ブローカーの口車に乗せられて、売ってしまう人もいる。

またマジョリティである貧困層がこぞって臓器を売り始めたものだから
売り手市場で価格が下がっている、とも。

Moniruzzaman氏は
こうして臓器を売る人の行為は
誘導・強要されたもので「自己選択」とは言えない、として、

米国国務省が中心となってグローバルに取り締まる、

同じく国務省が、すべての医療機関に臓器移植の記録を求め、
レシピエントとドナーの関係を確認するよう求める、

死後に臓器提供するシステムを持たないバングラデシュのような国を含め、
世界中で死者からの臓器提供システムを整備して行く、

など、臓器売買への防止策を提言している。