ハリケーン・カトリーナ:メモリアル病院での“安楽死”事件 5/5: その後・考察
9月11日、カトリーナの上陸から13日後に、
病院から引き上げられたのは45の腐乱した遺体だった。
警察の捜査では、24人に安楽死が行われたと判断されたが、
検察は最終的に立証可能なのは目撃証言がある7階の4人のみと考えた。
病院から引き上げられたのは45の腐乱した遺体だった。
警察の捜査では、24人に安楽死が行われたと判断されたが、
検察は最終的に立証可能なのは目撃証言がある7階の4人のみと考えた。
Everett氏の未亡人はTenet, LifeCare, Pouその他を相手取って
ロングフル・デス訴訟を起こした。
ロングフル・デス訴訟を起こした。
「誰があの人たちに神を演じる権利を与えたというの? 一体だれが?」
8月31日にCookがモルヒネ投与を看護師に指示した女性患者のカルテには
午後2:10から3:35の間に15ミリのモルヒネを7回投与されたと記されている。
それまで女性が苦痛除去の目的で投与されていた7倍の量になる。
しかし、それ以前に既に投与されていたことや末期がんだったことから
Cookの関与したケースは因果関係が立証できないと判断された。
午後2:10から3:35の間に15ミリのモルヒネを7回投与されたと記されている。
それまで女性が苦痛除去の目的で投与されていた7倍の量になる。
しかし、それ以前に既に投与されていたことや末期がんだったことから
Cookの関与したケースは因果関係が立証できないと判断された。
LifeCareの7階に最後に残った9人については
カルテ、解剖報告、毒物検査の結果を中立の立場で検証した
3人の専門家のうち2人が「殺人」と断定。
カルテ、解剖報告、毒物検査の結果を中立の立場で検証した
3人の専門家のうち2人が「殺人」と断定。
「それまでの数日間に渡って被災状況を生き延びた患者たちが、
1つのフロアで3時間半の間に毒物中毒で死ぬというのは偶然を超えている」
1つのフロアで3時間半の間に毒物中毒で死ぬというのは偶然を超えている」
(記事には、この後、さらに裁判での諸々が描かれていますが、疲れたので省略)
――――――
この記事を読んで、押さえておきたいのは、
・“安楽死”はあった。
・一旦カテゴリー3と分類されてしまうと、カテゴリーの方が独り歩きをし、
個々の患者が実際にどういう状態にあるかという事実の把握や丁寧なアセスメントが
おろそかになってしまう可能性。
個々の患者が実際にどういう状態にあるかという事実の把握や丁寧なアセスメントが
おろそかになってしまう可能性。
・7階がLifeCareという外部の会社にリースされていたことが、
避難を主導したメモリアル側の対応を巡って事態を複雑にしたこと。
避難を主導したメモリアル側の対応を巡って事態を複雑にしたこと。
Pou医師の言葉に見られるように、
「LifeCareの患者はどうせ意識のない重症患者」という先入観が
メモリアルの医師らにはあったのでは?
「LifeCareの患者はどうせ意識のない重症患者」という先入観が
メモリアルの医師らにはあったのでは?
その他、頭に浮かんだ疑問としては
Pou医師自身も自らの信念によって行動したというよりも、
むしろCookから方法を教えられた際に、Pouは
病院上層部が方針決定し実施の指示を出したのだと誤解したのでは?
むしろCookから方法を教えられた際に、Pouは
病院上層部が方針決定し実施の指示を出したのだと誤解したのでは?
・確固とした信念があってやったことではなくとも、
一旦それが公になって自分の行為を正当化する必要が生じると、
メディアと世論が求める英雄的役割を引き受けることが最も自然な(有利な?)選択となり、
Pouが災害時の医療職免罪アドボケイトを自ら引き受けたのだとするなら
それは射水の呼吸器外し事件と構図が同じなのでは?
一旦それが公になって自分の行為を正当化する必要が生じると、
メディアと世論が求める英雄的役割を引き受けることが最も自然な(有利な?)選択となり、
Pouが災害時の医療職免罪アドボケイトを自ら引き受けたのだとするなら
それは射水の呼吸器外し事件と構図が同じなのでは?
・混乱状態の中で、人が様々な状況把握を自分なりにする際には
その人がもともと持っている偏見や思いこみが、
そこに重大な偏りを産むのではないか。
その人がもともと持っている偏見や思いこみが、
そこに重大な偏りを産むのではないか。
例えば「置いていく」と聞かされた看護師が
「黒人がやってきたら」この人たちはひどい目にあわされる、と考えたように。
「黒人がやってきたら」この人たちはひどい目にあわされる、と考えたように。
・そう考えてくると、この事件の背景にあった
医療経営上の力関係(株式会社経営でのフロア・リース)
重症者ケアに対する、一部医師らの「資源の無駄」との捉え方、
重症者に対する「どうせ意識などない」との無知と偏見、
「痛みから助けてあげる」と痛みも不快も感じていない患者が死なされていくこと、
「看護師を他で使える」など医療側の都合が「患者のため」と言い替えられること……
医療経営上の力関係(株式会社経営でのフロア・リース)
重症者ケアに対する、一部医師らの「資源の無駄」との捉え方、
重症者に対する「どうせ意識などない」との無知と偏見、
「痛みから助けてあげる」と痛みも不快も感じていない患者が死なされていくこと、
「看護師を他で使える」など医療側の都合が「患者のため」と言い替えられること……