Dignitasで自殺した15人目のカナダ人は「脊柱管狭窄症でターミナル」の怪

Kathleen(Kay) Carter さん(89歳)は2人の娘を伴ってスイスに行き、
1月15日にDignitasで自殺。

Dignitasで自殺した15人目のカナダ人となった。
(公表されたのはCarterさんが初めて。)

前日に「私は明日、尊厳をもって死ぬことを選びました」というメモを
口述筆記で家族と友人宛に残した。

近親者らが自殺幇助で罪に問われないよう、Kayさんがあらかじめ指示していたように
その手紙のコピー120通が、娘たちによってスイスから発送された。

Choosing to die with dignity
Ottawa Citizen, February 8, 2010


なんだかなぁ……ここでも、まったく解せないのは Kay Carterさんの病名。


このリンクの説明を読む限り、症状は要するに、腰痛とか身体のしびれのようなのですが
記事では「脊柱管狭窄症というターミナルなconditionだった」と書かれている。

(ちなみに英語で condition という場合、「状態」というよりも
「病気と障害」を一括して称する場合によく使われているように思います)

一体、どうして脊柱管狭窄症がターミナルな病気または障害なのか。

この病気そのものが命にかかわるようなものだとは思えない上に、
よほど重症化したからといって、それだけでターミナルになるということすら
私にはあり得ないことのように思えるのですが、
もし違っていたら、どなたかご教示ください。

しかも、この記事は脊柱管狭窄症の追加説明として、
以下のようにも書いているのです。

「脊柱管狭窄症、これがどういうものかというと、
Kayさんが“もう、まったくどうすることもできなくなる”と表現したようなcondition」。

Kay さんが実際に使っているのは totally collapsing。

collapse というのは建物などが崩壊するイメージで、
ここでは、人の肉体・精神の状態を、そのように完全に崩壊させていくような、という意味でしょう。

つまり全身がどうにもいうことをきかなくなる(精神的にも?)といった感じを言っているのでしょう。

しかし、これは、あくまでも本人の主観的な感じ方であって、
この記事のような文脈で「脊柱管狭窄症というのは、これほど酷い病気なのです」と言わんばかりに
その主観的な言葉でもって病気がどういうものかの”解説”に変えてしまうのは、

例えば風邪で熱を出している人が
「体中の関節が痛くて、だるくて、とても起きる気にならない」という言葉尻を捉えて、
「風邪というのは全身の関節がやられて、その痛みとだるさで寝たきりになってしまう病気」と
解説してしまうに等しいのでは……?


Inglis事件、Gilderdale事件を巡る世論の喧騒に
殺された人が実際にどういう状態だったかにはもはや誰も興味すら持たないかのようだ……
という感想を私はずっと抱いてきたのですが、

慢性疲労症候群
「母親が慈悲で殺したって許される」どころか「よくぞ殺してあげた」と言わんばかりに
称賛されるほどの悲惨な病気としてイメージ操作されることと、

脊柱管狭窄症があたかも、それだけでターミナルとなる病気であるかのように
Kay Carterさん自殺の報道がイメージ操作されていることとの間には、

なにか、非常に巧妙でイヤらしいものが通じている――。