MGH、重症脳損傷患者への同意なき臨床実験に参加か

マサチューセッツ総合病院(MGH)の研究チームが
救急搬送されてくる重症の頭部外傷患者に対する同意なき臨床実験に
参加を検討していることを巡って論争になっている。

頭部外傷で脳損傷のある患者は受傷後数時間以内に
脳浮腫や蘇生の変化などの二次的損傷(secondary cascade)が起こるが、
そこで受傷後数時間以内にホルモン剤、プロジェステロンを投与することによって
それを防ぐことができるのではないかと期待されている。
(ただし、そのメカニズムも効果もいまだに明らかにされているわけではない)

一方、救急搬送されてくるそうした患者は意識がなく、
家族など代理決定権者を探すのには少なくとも4時間半もかかると言われており、
早期にプロジェステロンの投与を可能とするためには、
同意なき臨床実験にそうした患者を参加させる以外にないし、

それによって重症脳損傷の治療方法に繋がる可能性があるなら、
特に治療の選択肢が臨床研究によって次々に否定されている領域としては
正当化できる、というのが研究者らの主張。

一般には、臨床実験への参加は
患者または代理決定権者がリスクを十分に説明され、
参加を拒否する機会を保障された上で同意することが必要とされているが、

1996年の法でFDA
緊急のケースでは例外を認めた。

しかしボストン大学倫理学者、ジョージ・アナスは強硬に反対。

なぜ同意を取り付けられる患者の研究ではいけないのか、と問い、
「救急部へ来る患者は、そこで研究に参加させられるなんて夢にも思っていないし、
事故にあったからというだけで研究に同意したことにはならない」

また、効果がある可能性があるというだけでは
患者が研究に参加するかどうかを決める権利を否定する根拠として十分ではない、と主張し、
「やはり同意と同程度の強力な根拠が必要である」と。

現在すでに40の病院が参加し、
760人以上の患者で実施。

MGHが参加すれば、
資金が切れる2014年までに目標の1140人を達成できると研究者らは逸る。

Hospitals want to test drug with no consent
The Boston Globe, June 8, 2013


米国では2004年に
人造血液を外傷患者にICなしに実験して
少なくとも47人の死者を出していて、

この人造血液が問題になった2008年の報道で既に
外傷患者ではICなしに治験が行われている、と書かれている ↓



また、2009年にやはりICなしで外傷患者に臨床実験で
通常よりも高濃度の生理的食塩水などを与えて、死者が出ている ↓



これらの件について
上記の記事が一切触れていないのは不気味。

この路線でいくと、
いずれは植物状態脳死の人たちの実験利用へ向かうのでは?

実際、2006年にドレイパーという英国の生命倫理学者が
意識がある時の同意があれば植物状態の人を実験に利用しても問題はない、と主張している。

植物状態や、それほどでないにせよ意に染まない状態で生きながらえるよりは、
臨床試験に参加して他者のためになる方が明らかによい生き方だ」といって ↓
http://www.arsvi.com/2000/0705km.htm

そして、これは現在すでに
「無益な治療」停止から臓器提供へと誘導する際に使われている論理――。



【19日追記】
こんなのも思いだしたので、追記 ↓