ビル・ゲイツの公教育改革に、米国の教師が突きつけ始めた“NO”

実は、昨日のエントリーで紹介したStraussの記事は、
こちらの記事を見つけた時に一緒にくっついてきたオマケ。

オマケがいかにも鋭く、面白かったものだから、
腰を据えて本命記事を読む覚悟を先延ばしにしたい気持ちも手伝って、
つい、そちらを先にエントリーにしてしまいました。

――ということで一夜あけて、こちらが本命記事。

Teachers’ letters to Bill Gates
Valerie Strauss, June 14, 2013


Strauss記者の鋭さは
冒頭2つのパラグラフに詰め込まれていて、
読むなり、ヤンヤと喝さいしたい気分だったので、

その部分を丸ごと、以下に。

ビル・ゲイツは、
自分の好みの事業に何十億ドルもの私財をほいほい投入するものだから、
現代学校改革運動の中心人物となっている。

例えば、大規模校を解体して小規模校のネットワークを作ろうと20億ドルをはたいた。
しかし、うまく行っていないと判断するやボツにした。

ビル・ゲイツゲイツ財団は、
異論の多い教師評価システムを開発するという実験に何億ドルも投入し、

今も米国中のあらゆる教師の授業をビデオ撮影して
仕事ぶりを評価するプロジェクトを推進している。
さらに、自分が主導する全国統一テストキャンペーン
(the Common Core State Standards Initiative)に少なくとも一億5000万ドル、
やはり評判の悪い生徒のデータベース構築にも1億ドル、
その他もあるけれど、このくらいで事態は掴めるだろう。

ゲイツのカネは学校改革の行方に深くかかわっているのである。

もちろん、ゲイツからの支援を歓迎する改革推進派もいれば、
批判する人たちもいる。

後者は、一市民がたまたま金を持っているからというだけで
どうして教育方針にこれほどの影響力を持てるのだろう、と、いぶかる人たちだ。

ゲイツのプロジェクトは、何らかの研究によって
効果が検証されているわけでもないのに、と。


そこでStraussが紹介するのが
このほど新しく立ち上げられたウェブ・サイト、Teachers’ Letters to Bill Gates

異論のある先生たちが皆でこのサイトで
ゲイツ夫妻に宛てた手紙を書こう、という趣旨。

記事のコメント欄でのやり取りによると、
管理者はNY市の教師のようです。

サイトの趣旨説明もまた
ゲイツ夫妻への手紙の形式で書かれているのだけれど、
それが実に問題の本質をズバリと突いていてアッパレなので、全文を以下に。
(なおゴチックは、どちらの引用でも、強い共感の意を込めてspitzibara)


親愛なるビル&メリンダ

私たちは、公教育という非常に広範な話題について、米国のみならず世界中の学校教師と対話しましょう、と、お2人をお誘いします。

これまで指摘されてきませんでしたが、おふたりは巨大な資産と権力を使って、公立学校の教育者、管理・行政職、保護者、生徒、地域住民など我が国また世界中の多くの人々の声を聞くという本来あるべき民主的なプロセスを経ることなく、教育という名の法人改革を創出してこられました。

お忙しいスケジュールの中で時間をとってくださり、我々の数々の手紙にお返事をいただければ幸いです。読者の方々にも、ゲイツ夫妻への手紙を書いてくださるよう呼びかけます。我々はご夫妻と読者の双方が対話に参加できるよう、それらをこのブログのエントリーとして掲載し、ここに民主的なプロセスのアーカイブをこしらえていきます。

敬意を失うことなく対話に参加しつつ、しかしお2人の方針が私たちの生徒の生活や私たち自身の職業や日常生活、私たちの学校や地域に影響する以上、その方針への反対意見はきちんと述べられるような、そんな対話がここでは可能だとお2人に感じていただければ、と考えております。

私たちはあまりにも長く声を封じられてきました。積もり積もった感情を語らなければならない人もいます。読者にも、この対話に参加するよう呼びかけます。そして、最終的にそれが公教育全体のためになれば、と考えます。


果敢にこの声を挙げた米国の先生たちに、心からの拍手を――。

米国の教育以外でも
民主的なプロセスを奪われたまま
スーパーリッチの恣意的な介入に晒されている、
途上国の子どもを含む多くの人々のことを思いつつ――。

そして、

一見、民主的なプロセスを経て決まったように見えるだけで、
本当はグローバル強欲ひとでなしネオリベ金融慈善資本主義が席巻する世界で、
同じことが私やあなたや私たちの子どもたちにも起こっている可能性にも
同時に思いをはせつつ――。