ケベックの法案は「医療的自殺幇助」という名の安楽死合法化法案

5日にカナダのケベック州議会に提出された
自殺幇助らしきものの合法化法案について、
報道がたくさん流れているのだけれど、

いくつかにざっと目を通してみて、肝心の部分に関する表現が
physician assisted suicide ではなく medically assisted suicide とされていたり

assisted dying や medically assisted deathだとか
「終末期の患者にmedical assistanceを受けて死ぬ権利」など、

ものすごく曖昧な表現に終始していることが
ここ数日、ずっと気になっていました。

やっと、はっきりさせてくれる記事と出くわしたところ、

なんと、なんと、この法案、
ぜんぜん「医師による自殺幇助」の合法化なんかじゃない。
れっきとした「安楽死」合法化法案だった。

記事から、事実関係を以下に。

・法案の名称は、Bill 52:An Act Respecting End-of-Life Care。
提出したのはケベック州の副保健大臣が属するケベック独立党。

・死への医療的幇助(medical aid to die)とは、死をもたらす注射の意。

・患者は、また患者に自己決定能力がない場合は同意見のある人が、
予後、その鎮静が不可逆で死につながる性格のものであること、予測される長さを、
同意書に署名する前に知らされていなければならない。

(the irreversible and terminal nature of the sedation と書かれているのだけど
通常の sedation である鎮静なら可逆的だし、それ自体ターミナルでもないので
ここの sedation とは上記の「死をもたらす注射」の意と思われるのですが
じゃぁ、なぜ、そう書かずに、わざわざ sedationと、混同をまねく書き方をするのだろう????)

・患者自身が「自由意思で、インフォームを受けたうえで」
日付入りの同意用紙に署名し、自分で死への医療的幇助を申請しなければならない。
患者が同意することができない場合には、
未成年でなく医療チームのメンバーでもない第三者
医療職の立ち会いのもとで同意書に署名し、
その医療職が立会人として確認の署名を行う。

・誰かの代理で同意する権限が認められるためには
患者本人が同意能力を失う前に医療による幇助死(medically assisted death)への同意が
伝えられていなければならない。

・患者はケベック州在住の18歳以上で、
不治の病で、不可逆的な健康状態の悪化と、
「本人が許容できる方法では軽減することのできない
絶え間のない、耐え難い身体的または心理的な苦痛」に苦しんでいること。

心理的な苦痛でも可、という個所の拡大解釈の問題が
ベルギーの安楽死法でも指摘されています)



Veronique Hivon副大臣は、
この法案が成立しても、連邦政府の刑法に触れることはない、と確信している。
なぜならば、連邦刑法で自殺幇助は禁じられているが
安楽死は特にそれと名指しで禁じられているわけではないから。

それから、もう一つ、
医療行政の責任は各州にあるから。

(それなら、どうして堂々と「安楽死」と言わないんだろう?)

なお、連邦政府法務大臣
ケベック州の法案について、今後どういうことになっていくのか注視する、と。

Quebec bill addresses assisted death
Proposed law gives dying patients right to die with medical assistance
The Ottawa Citizen, June 13, 2013


他に、この記事がざっと取りまとめている
これまでのカナダでの動きとしては、








          ―――――――

日本尊厳死協会の岩尾理事長も
医師による自殺幇助を「消極的安楽死」と定義した際に、
「最近は臨死介助という言葉に置き換えられる」と語っている ↓



どうも世界的に、
文言の曖昧化によって、概念そのもののなし崩し的な拡大が
狙われているような気がしてならないんだけど……。

それにしても、よ、

physician assisted suicide とは、
医師が致死薬を処方し患者本人が飲む「医師による自殺幇助」。

medically assisted suicide とは、
医師が致死薬を注射する「医療的自殺幇助」。

後者は、またの名を「積極的安楽死」とも言います。

……だって。ちゃんと覚えておきませう。