メディアのイメージ操作でアルツハイマー病の”予防的安楽死”へと誘導する「安楽死の政治」

オーストラリアの生命倫理学者 Megan―Jane Johnstoneが
“Alzheimer’s disease, media representations and the politics of euthanasia: constructing risk and selling death in an aging society” という本を出し、

メディアによるアルツハイマー病の否定的なイメージ操作で
安楽死の対象としていこうとする「安楽死の政治」に警告を発している。

アルツハイマー病は
人口の高齢化に伴って世界中の医療システムにほぼ壊滅的な影響を与える
「今世紀最大の病気」として描かれてきた。


このような描き方は、
「生きながら死んでいるようなもの」「終わりのない葬式」「死んだ方がまし」などの表現と共に、
自分もかかるのでは、そういう姿になるのでは、と人々の恐怖を煽って、
アルツハイマー病を暗黙のうちに安楽死のターゲットとしている。

そうした立場は、アルツハイマー病を解決策の必要な問題とみなしており、
その解決策として予防的で思いやりある安楽死が考えられるようになってきている。


しかし、メディアと安楽死推進の立場の団体が持ち出してくるような
個々の患者のケースだけから問題を「選択の問題」へと単純化することは
世論を一方へ誘導することにしかならない、と。

安楽死は決して単純な選択の問題ではないし、
選択それ自体がもともと単純な問題でもない。
安楽死はきわめて複雑な現象。

アルツハイマー病も
メディアが盛んに流しているような個別のケースで適切に描けるような病気ではない。




アンジェリーナ・ジョリーが「予防的両側乳房切除」をブレークさせたところに、
今度はしぶる医師を説得して「予防的前立腺切除」を強行した
53歳の英国人男性のニュースもあった ↓
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10528

で、こういう科学とテクノで簡単に“プロアクティブな予防”文化が浸透していった先に
やってくる流行が「アルツハイマー病を予防するための思いやりに満ちた安楽死」……?


しかし、なんにせよ、
安楽死のポリティックス」という表現は、どんぴしゃ。