Owen教授らの植物状態患者の意識検知に、ベッドサイド簡易法も

ケンブリッジ大、カナダのウエスタン・オンタリオ大のオウェン教授が
植物状態と診断された患者と脳スキャンを通じてコミュニケーションをとる方法を
研究していることについては以下のエントリーで触れてきましたが、



去年のカナダの患者さんの事例以前にオウェン教授らは
脳波を利用したベッドサイドでの簡易な方法でも調べられることを
Lancetで報告していました。

Owen教授らはこれまでに
MRI装置を利用して脳の血流の変化を画像化するfMRIと呼ばれる技術を使って、
植物状態と診断された患者に簡単な質問をし、
エスだったら、テニスをしているところをイメージし、
ノーだったら、家の中を歩き回っているところをイメージするよう指示して
応えてもらう、という方法によって、

17%の患者で
質問を理解できるだけの意識と、
それを伝えることができるだけのモチベーションがあることを発見してきた。

しかし、fMRIには
物理的に患者をそこに運ばなければならないことに伴う様々な困難と
コストがかかる難点があり、どの患者にも広く実施することができないため、
携帯タイプの脳波検査機を使って、質問ではなく簡単な指示を出すやりかたで、
ベッドサイドで簡易にできる方法を考案したとして、
Lancetに報告されたもの。

The Coma Recovery Scale-Revised の定義に即して植物状態と診断された患者 16人と、
健康な患者12人に、まず右手を握りしめては緩めることをイメージするよう求め、
それを数回やった後に、次には足の指で同じことをイメージするよう指示したところ、

植物状態と診断された患者の3人では
健康な人のほとんどと同じ脳波パターンが検出された。

これまでの17%という結果とほぼ一致する。

一方で、
健康な人の中にも、手や足の動きをイメージすることができにくく、
全く脳波に反応が見られなかったケースもあるため、

植物状態と診断された人の大半で脳波の反応がなかったからといって
この技術によって、それらの人には全く意識がないと判断することはできない、
ということも判明した。

Owenらは脳とコンピューターのインターフェースによって
さらにコミュニケーションの可能性が広がると期待している。


Guardianの記事はこちら↓
Brain scanner brings new hope for patients in vegetative state
The Guardian, November 10, 2011


ちょっと気になるのはチーム(the doctors)が
このブレークスルーには、倫理的に難しい問題があると発言していること。

そこについてはGuardianの一節には、
以下のように書かれている。
It would be difficult to know the inner world of somebody in a vegetative state, and the ability to answer yes or no to a question might not indicate a capacity to consider a complex issue such as whether life was still of value.


ざっくりまとめると、
質問に「イエス」―「ノー」で応えられるからといって、
その人が「まだ命に価値があるか」どうかという複雑な問題を
考える能力があるとは言えないだろう、ということ。

ただ、この個所は直接話法がまったく使われていないので、
イマイチ誰がどういう意図でどういう表現で言ったことなのか
はっきりしない点もある。

こうした研究に対しては、
それを「死の自己決定権」を実現させてあげる”親切”につなげようとする動きが
必ずや現れてくるだろうということは、

上記の10年のエントリーでも予想していたけど。