アイルランドのFleming訴訟・高裁判決「自殺幇助規制緩和はパンドラの箱」

補遺で追いかけてきたように、

アイルランドのMS患者 Marie Fleming さん(59)が
自殺幇助の全面禁止は違憲であると主張し、

症状が悪化した際には夫に自殺幇助してもらいたいが、
その際に夫に犯罪者になるリスクを侵させることはできないとして
公訴局長DPPに起訴判断の基準を示すガイドラインを求めて提訴した裁判で、

アイルランドの高裁がFlemingさんの訴えを退け、
Flemingさんは最高裁に上訴すると言っていますが、

そのFleming訴訟は、
英国でDebbie Purdyさんが08年に起こしたのと全く同じ趣旨のものです。
(詳細は文末にリンク)

そのFleming訴訟の高裁判決の内容について概要を取りまとめた記事があったのですが、
特に英国のPurdy訴訟との対比で印象的なので、概要を以下に。


判決は1月10日。

自殺幇助の全面禁止は
弱者を非任意の死から守る目的で正当化され、
憲法や欧州人権条約における個人の自律と平等を侵してはいない、

また法の変更ができるのは議会のみであり、
したがって自殺幇助で起訴するか否かの判断ファクターに関するガイドラインを出して
事実上の法の変更をDPPが行うのは憲法違反となる。

意思決定能力のある成人には、
それが死にいたる場合であっても治療を拒否する権利があるが、
三者が他者の死をもたらす積極的な手段を取るのはそれとは全く別。

どんなに厳格なセーフガードを設けたとしても、
「高齢者、障害者、貧しい人々、望まれない人々(the unwanted)、
拒絶された人々(the rejected)、孤独な人々、衝動を抱えた人々、
経済的に困窮する人々、情緒不安定な人々が、
自分は家族や社会の重荷になっているという思いから逃れるために、
この選択肢を利用するのを防ぐことは不可能であろう」

Flemingさんの求めに応じて全面禁止の紐をちょっとでも緩めることは
「一度開けたら、その後は二度と閉じることはできないパンドラの箱をあけるようなもの」




英国ではPurdy訴訟の最高裁判決が
DPPに法の明確化として基準を示すよう命じ、
10年にガイドラインができました。

(もっとも高裁判決では同様に「法改正は議会の仕事」とPurdyさん敗訴だった)