ファーマゲドン: オピオイド鎮痛剤問題のさらなる裏側
“オピオイド鎮痛剤問題”の裏側(米)(2012/10/20)
続報といってもよい記事が大晦日のWPにありました。
Rising painkiller addiction shows damage from drugmakers’ role in shaping medical opinion
WP, December 31, 2012
WP, December 31, 2012
上記10月のエントリーで拾ったProPublicaの記事の主なポイントが
オピオイド鎮痛剤の処方拡大のロビー活動を行ってきたAmerican Pain Foundationの背後に
いかに製薬会社の資金力・影響力が働いているか、という点にあったのに対して、
オピオイド鎮痛剤の処方拡大のロビー活動を行ってきたAmerican Pain Foundationの背後に
いかに製薬会社の資金力・影響力が働いているか、という点にあったのに対して、
今回のWP記事のポイントは、
OxyContinの製薬会社Purdueや販売会社などがいかに論文で治験データを隠ぺい・操作し、
FDAの諮問機関にいかにそれら企業と金銭繋がりのある研究者が含まれて、
「オピオイド鎮痛剤の依存リスクは非常に小さい」との通説が形成されていったか、
OxyContinの製薬会社Purdueや販売会社などがいかに論文で治験データを隠ぺい・操作し、
FDAの諮問機関にいかにそれら企業と金銭繋がりのある研究者が含まれて、
「オピオイド鎮痛剤の依存リスクは非常に小さい」との通説が形成されていったか、
それによって、いかにガンや急性疼痛から慢性痛への処方拡大が誘導されてきたか、
そして、現在いかに多くの患者が依存に苦しみ、時に命まで落としているか、という点。
そして、現在いかに多くの患者が依存に苦しみ、時に命まで落としているか、という点。
ざっと、事実関係を中心に以下に。
オピオイド鎮痛剤の処方数は過去20年間で3倍に急増している。
この記事は、その増加を後押ししたのは
a massive effort by pharmaceutical companies to shape medical opinion and practice
(医学的見解と医療実践に手を加えて形成しようとの製薬会社による多大な努力)
だったと書く。
a massive effort by pharmaceutical companies to shape medical opinion and practice
(医学的見解と医療実践に手を加えて形成しようとの製薬会社による多大な努力)
だったと書く。
例えば、年間20人が薬物のオーバードースで命を落としていて
一時は人口8万人の地域にピル・ミルが9軒も林立し
昨年は住民一人当たりにつき100回分以上のオピオイド鎮痛剤が処方・販売されたというポーツマスでは
保健師がこの状況を「ファーマゲドン」だ、と。
一時は人口8万人の地域にピル・ミルが9軒も林立し
昨年は住民一人当たりにつき100回分以上のオピオイド鎮痛剤が処方・販売されたというポーツマスでは
保健師がこの状況を「ファーマゲドン」だ、と。
2003年にNew England Journal of Medicineに発表された論文は
依存リスクを最小限と報告したが、
依存リスクを最小限と報告したが、
発表後、Purdueが離脱症状を否定する根拠として繰り返し使った論文では
離脱症状が疑われるケースを削除したデータがPurdue側から研究者に渡され、
研究者らはPurdueから受け取ったデータを分析しただけだったとか。
離脱症状が疑われるケースを削除したデータがPurdue側から研究者に渡され、
研究者らはPurdueから受け取ったデータを分析しただけだったとか。
(現在はだいたい50%が依存を起こすと理解されている、と専門家)
FDAが2002年に諮問したパネルでは
10人の外部委員のうち5人がPurdueとの金銭関係がある研究者だった。
そのうちの一人はその後オピオイド鎮痛剤の「宣教師」役を演じた後悔を語って
次のように発言している。
10人の外部委員のうち5人がPurdueとの金銭関係がある研究者だった。
そのうちの一人はその後オピオイド鎮痛剤の「宣教師」役を演じた後悔を語って
次のように発言している。
「プライマリーケアの聴衆が……オピオイドを使いやすくなるような説明を創ろうと……」
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読めば読むだけ、それが確認されるばかり――。
例えば、最近の糖尿病治療薬Avandiaのスキャンダルでは
製薬会社資金での治験が増えて論文の治験データの信憑性が揺らぎ
医学研究そのものが崩壊の危機に瀕している、と
New England Journal of Medicine の編集長自らが認めている ↓
製薬会社資金での治験が増えて論文の治験データの信憑性が揺らぎ
医学研究そのものが崩壊の危機に瀕している、と
New England Journal of Medicine の編集長自らが認めている ↓
製薬会社資金に信頼性を失っていく治験データ……Avandiaスキャンダル(2012/11/30)
【追記】
今日のNYTにも OxiContin関連のニュースあり、
近くOxiContin と Opana のジェネリック薬が発売されるにあたり、
濫用防止のため砕きにくく溶けにくくするなど錠剤の工夫を求められてきたPurdueなどが
同様の工夫が十分でないと主張してジェネリックの発売を阻止しようとしていたが失敗したらしい。
「儲けのためじゃなく、国民の安全のためだ」と主張していたらしいけれど、
上のWP記事を読んだ後でそれを言われても……。
http://www.nytimes.com/2013/01/02/health/drug-makers-losing-a-bid-to-foil-generic-painkillers.html?_r=0
今日のNYTにも OxiContin関連のニュースあり、
近くOxiContin と Opana のジェネリック薬が発売されるにあたり、
濫用防止のため砕きにくく溶けにくくするなど錠剤の工夫を求められてきたPurdueなどが
同様の工夫が十分でないと主張してジェネリックの発売を阻止しようとしていたが失敗したらしい。
「儲けのためじゃなく、国民の安全のためだ」と主張していたらしいけれど、
上のWP記事を読んだ後でそれを言われても……。
http://www.nytimes.com/2013/01/02/health/drug-makers-losing-a-bid-to-foil-generic-painkillers.html?_r=0
【いわゆる“Biedermanスキャンダル”関連エントリー】
著名小児精神科医にスキャンダル(2008/6/8)
著名精神科医ら製薬会社からのコンサル料を過少報告(2008/10/6)
Biederman医師にさらなる製薬会社との癒着スキャンダル(2008/11/25)
Biederman医師、製薬業界資金の研究から身を引くことに(2009/1/1)
著名小児精神科医にスキャンダル(2008/6/8)
著名精神科医ら製薬会社からのコンサル料を過少報告(2008/10/6)
Biederman医師にさらなる製薬会社との癒着スキャンダル(2008/11/25)
Biederman医師、製薬業界資金の研究から身を引くことに(2009/1/1)
【その他、08年のGrassley議員の調査関連】
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書(米国)(2008/11/17)
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書 Part2(2008/11/23)
今度はラジオの人気ドクターにスキャンダル(2008/11/23)
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書(米国)(2008/11/17)
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書 Part2(2008/11/23)
今度はラジオの人気ドクターにスキャンダル(2008/11/23)
最近のものでは例えば、↓
「製薬会社に踊らされて子どもの問題行動に薬飲ませ過ぎ」と英国の教育心理学者(2011/1/18)
ジェネリックを売らせないビッグ・ファーマの「あの手この手」が医療費に上乗せられていく(2011/11/15)
「製薬会社に踊らされて子どもの問題行動に薬飲ませ過ぎ」と英国の教育心理学者(2011/1/18)
ジェネリックを売らせないビッグ・ファーマの「あの手この手」が医療費に上乗せられていく(2011/11/15)
あと、この問題を一貫して調査し報道しているProPublicaのシリーズの一つがこちら。↓
(ここにも鎮痛剤関連のスキャンダルが出てきています)
ProPublicaが暴く「ビッグ・ファーマのプロモ医師軍団の実態」(2010/11/2)
(ここにも鎮痛剤関連のスキャンダルが出てきています)
ProPublicaが暴く「ビッグ・ファーマのプロモ医師軍団の実態」(2010/11/2)
【骨減少症関連エントリー】
骨減少症も“作られた”病気?……WHOにも製薬会社との癒着?(2009/9/9)
更年期は、ビッグ・ファーマの提供でお送りしました……(2009/12/14)
ビッグ・ファーマが当てこむ8つの“でっちあげ病”(2010/4/17)
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更年期は、ビッグ・ファーマの提供でお送りしました……(2009/12/14)
ビッグ・ファーマが当てこむ8つの“でっちあげ病”(2010/4/17)
【米不整脈学会、高血圧学会を巡るスキャンダル関連エントリー】これもGrassley議員の調査で明らかに
学会が関連企業相手にショーバイする米国の医療界(2011/5/11)
1つの病院で141人に無用な心臓ステント、500人に入れた医師も(2011/5/15)
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