ベルギーの安楽死に関する報告書:BioEdgeのまとめ

昨日の補遺今朝のエントリーで取り上げたベルギーの安楽死の実態報告書に関する
BioEdgeの記事を読んでみました。

Michael Cookによると、
この報告書の中心テーマは安楽死監視評価委員会がまともに機能していない、という点。

10年間に約5500件の安楽死が行われ、
そのうちの一件として警察に通報されたものがないことから、
この調査を行ったEuropean Institute of Bioethics(IEB)では
医師らが互いの過ちを糾弾し合えると期待するのは幻想だ、と。

さらにコントロールとアセスメント委員会の16人と規定されるメンバーの約半数が
ベルギーで力のある死の権利協会のメンバーだといい、
IEBはコントロールが効いていないのも拡大解釈もそれで説明できる、と。

その結果として濫用が起こっており、
その事例としてCookが挙げているのは、


・患者または代理人の書面による安楽死希望の意思表示が必要とされているが、
委員会はしばしばこの義務規定を免除している。

・当初、患者は命を脅かされる病気または不治の病気であることと規定されていたが
昨今では単に重病で衰弱を伴うなら対象とされている。

・苦痛が耐え難く、緩和不能であることとされているはずでありながら、
患者は苦痛緩和のための薬を拒否することができる。
つまり「委員会は、苦痛の耐え難さや緩和不能であることを確認するという
法の中核であるべき役割を果たさないと決めてしまっている」

・「心理的な苦痛」の境界線が拡大し続けている。

・2002年の法律では医師による自殺幇助は認められていないにもかかわらず、
委員会はこれを無視し、自殺幇助の事件を日常的に見逃している。

・患者が自宅で安楽死する場合には、医師が自分で薬局に行き、
登録している薬剤師から致死薬を受け取って、使用後の余剰分は返却しなければならないが、
実際には家族が薬局へ行き、資格のないスタッフが薬を出し、
余剰分についてはノーチェックになることが多い。


ちなみに報告書英語版の結論部分全文の仮訳はこちらに。



安楽死や自殺幇助で処方された薬のトラッキングについては
私もずっと疑問に感じていることの一つ。