Owen教授の研究で、12年以上「植物状態」だった患者に意識があることが判明

当ブログでも何度か取り上げてきた英国の神経科医Adrian Owen教授が
BBCの番組Panoramaに出演して、

植物状態とされたカナダの患者が、脳スキャンを使ったやりとりで、
意識があり、苦痛を感じてはいないことを告げた、と報告。

重症の脳損傷を受けた患者が
臨床的に意味の通った情報を医師に提供できたのは初めて。

患者はカナダ、オンタリオ州ロンドンの Scott Routleyさん。

「スコットは意識があり、ちゃんと思考することができていると
我々に示すことができました。

何度かスキャンを行ってきましたが、
彼の脳活動のパターンから、我々の質問に意識的に答えていることは明らかです。

スコットは自分が誰でどこにいるか分かっていると思います」

スコットさんは警察車両との衝突事故を起こして、
Owen教授が介入するまで12年以上の間ずっと植物状態だと考えられてきた。

10年以上担当してきた主治医は、
スキャンの結果でそれまでのアセスメントが全部ふっとんだ、と言い、

「典型的な植物状態の患者の状態だったんですよ。
感情は見られないし、目で物をじっと見ることも物の動きを追うこともなかった。
意味のある自発的な動きも見せたことがなかったので、
MRIを使えば、こうした認知反応を見せることができたなんて
本当に驚き、感動しました」

Owen教授が研究している脳スキャンによるコミュニケーションとは
患者にテニスをしているところと家でくつろいでいるところを頭に描くよう指示して、
それぞれによって脳の血流パターンが異なるため、
片方をYes, もう一方をNoに振り分けて
Yes –Noの質問に答えてもらう、というもの。

Owen教授はこれまでにも
植物状態とされている患者のほぼ5人に1人には意識がある可能性を指摘してきた。

また、もう一人の交通事故の患者 Steven Grahamさんは
2歳の姪っ子Ceiliを知っているかと問われてYes と答えた。
Ceiliが生まれたのはGrahamさんが事故にあって後のことなので
これによって彼が新たな記憶を形成し残すことができることが明らかとなった。

Panoramaチームは1年以上かけて
カナダのthe Brain and Mind InstituteとケンブリッジのAddenbrooke病院で
Owen教授の研究に参加した植物状態と最少意識い状態の患者さんたちを
撮影してきたという。





以下は、これまで当ブログで拾ってきた回復事例。

【米国:リリーさん】
植物状態から回復した女性(2007年の事件)







【米国: Sam Schmidさん】
アリゾナで、またも“脳死”からの回復例(2011/12/24)

【豪:Gloria Cruzさん】
またも“脳死”からの回復事例(豪)(2011/5/13)


【英国: Steven Thorpeさん】
英国で、またも“脳死”からの回復事例(2012/4/30)

【米: Richard Marshさん】
ロックト・イン症候群からの回復事例(米)(2012/8/9)