「英国の社会的包摂:主要メッセージ」書きました

前のエントリー「英国の社会的包摂施策」を書きましたの添付資料です。


社会的包摂:主要メッセージ

1. 排除への取り組みは、サービス利用者をあらゆるレベルで動員することなしには成功しない。排除されている人々と協働する共生産的アプローチが、サービス開発・実施のすべてのレベルで不可欠である。
2. 社会的包摂とは単なる再就労の問題にとどまらず、もっと幅広い社会参加の問題である。多くの市民が当たり前と考える社会的、経済的、教育的、また娯楽・文化的機会と医療サービスにアクセスする権利が、全ての人にある。
3. 社会的包摂は単なるアクセスの問題にとどまらない。社会的包摂は主流サービスへのアクセス改善の問題にとどまらず、被雇用者として、学生として、ボランティアとして、教師として、介護者として、親として、アドバイザーとして、住民として、すなわち能動的市民としてのコミュニティへの参加の問題である。
4. 従来の縄張りを超えて働きかける必要がある。包摂に向けた障壁軽減のためには、あらゆるレベルで縦にも横にも官民の機関間の取り組みを統合し、個々人の経験に直接的に繋がりながら施策や実際の取り組みに働きかけていく必要がある。
5. 社会的包摂はパートナーシップによる取り組みが支えである。全体とはバラバラの部分の集合のことではない。地域参加や能動的市民性を支援し社会的資本を構築するためには、あらゆるセクターの機関がそれぞれの間をつなぐ橋を築くことが必要となるが、それはパートナーシップによる取り組みで実現できる。
6. 排除された多くのグループにとって、社会的包摂は中心的な問題である。精神障害のある人、高齢者、認知症の人、障害者にとって、包摂とは、予防、健康増進、持続的な支援、許容度が高く暮らしやすい地域づくりの問題である。
7. 公セクターの義務は積極的義務である。差別解消への取り組みとして平等と機会を積極的に増進することは、心身の障害をめぐる公セクターの義務である。排除を起こす障壁の撤廃には、平等促進のための法的手段がカギとなる。
8. 一人ひとりのアイデンティティが回復と包摂に繋がる。人は単なるカテゴリーや診断名ではなく、また単に満たすべきニーズを持つ存在でもなく、貴重な貢献ができる存在である。自分が所属する多くのコミュニティで得られる機会にアクセスでき、能動的市民として貢献し評価されるよう、支援するサービスが必要である。
9. 包摂を促進するためには差別化されたサービス提供を主流のサービスに統合する道筋が必要である。コミュニティで差別された一部のみを対象とするグループや活動は、誰でもアクセス可能な主流サービスへと統合していく支援の一環と位置づけられない限り、差別を強化する恐れがある。
10. メンタルヘルスと満足できる生活のためには健康的な職場が必要である。休職や失業の原因として多いのは、その他の労働関連病よりもストレス、うつ病と不安症。許容度の高い環境を提供し、肯定的で本人の力を引き出す態度で接することにより、職場と学習環境はメンタルヘルス向上を支援する必要がある。

介護保険情報」6月号掲載