検死官が近親者による自殺幇助は見て見ぬフリ(英)

英国のシンク・タンクDEMOSの調査報告書で
自殺幇助が疑われる事件を検死官がスル―しているという
とんでもない実態が明らかになっている。

調査方法は検死官へのインタビューと、検死局のデータ調査。

報告書は以下のDEMOSのサイトから無料でダウンロードできますが、
私はまだ読んでいません。


とり急ぎ、以下の長短2つの記事から、その衝撃の実態とは、

15人に2人の検死官が、
自殺幇助の可能性があるケースを意図的にスル―したことがある、と。

理由は多くの場合
「残された友人や家族のためにことを荒立てたくなかったから」

今回の調査対象で出てきた検死官の衝撃の発言とは、

疑いがあると思ったケースは沢山ありましたが、
それを詳細に調べることが特に私の仕事というわけではないし、
どうしてもやらざるを得ない立場ならやりますが、
まぁ、(真実を)知りたくなかったということですね。

絶対に間違いないというケースなら、警察に通報したでしょうね。
自殺幇助は犯罪ですから。

でもたいていは誰かがパートナーや友人に対して、
苦痛や苦悩を終わらせたいと頼んだケースです。

そういう話を、死んだ人の親族から聞かされれば
その人たちに対して、本人がその時に自殺するのを知っていたかどうかまで
突っ込んで聞いたりはしないようにしています。

報告書の著者らは、これらの結果は
「検死官が自殺幇助が疑われるケースに対して時に目をつぶっているとのエビデンス」だとし、

現在、英国の自殺者の1割が
慢性病または病気でターミナルな状態にある人によるものとされているが、

自殺者も、自殺幇助も実際の件数は
表に出てきているよりもはるかに多いのではないか、と分析。

上記DEMOSの当該サイトによれば、
連立政権の自殺防止に関する意見募集に呼応する形で、

自殺の本当の原因の調査・究明の必要に加えて、
地域ごとに自殺の調査や検死官の情報共有の義務付けを提言している。




公訴局長のガイドラインが出て以来、
英国で「近親者による自殺幇助は事実上、合法化された」という空気が広がっていることは
かねて当ブログが懸念してきた通りで、

ガイドラインは「自殺幇助事件は全て警察が捜査する。
その上で自殺幇助の証拠が揃っている場合の起訴判断については
ガイドラインのファクターを検討し、結論には公訴局長の同意が必要である」
としているものでありながら、

先月も、以下のエントリーで取り上げたように、
警察レベルで「近親者の自殺幇助だからOK」との判断が行われるという
ガイドライン違反が起こっていることを指摘したばかり。



そして、今回、DEMOSの報告書が明らかにしているのは、
さらに、その警察以前に、検死官の段階で
「近親者による自殺幇助だからOK」との判断が
恣意的に行われているという実態――。

しかし、「どうしてもやらざるを得ない立場ならやりますが」って……
検死官って、死の真実を突きとめることが仕事なのでは?

その検死官が「真実を知りたくなかった」と言うのであれば、
自殺幇助を装った殺人だって、やりたい放題ということでは……?

いや、そもそも法改正は行われていないし
ガイドラインでも自殺幇助は今だに違法行為であると明記されているというのに?

なにやら、英国の司法制度そのものが暗黙のうちに
重病や重い障害のある人だったら、死のうが殺そうが、
みんなで目をつぶりましょう、という空気に転じているような……?

こういうことを考えるにつけ、
やはり2008年のGilderdale事件と、2年後の
「よくぞ殺した」と言わんばかりの判決、世論の狂騒は
本当に象徴的だったと、改めてつくづく痛感します。↓