シアトルこども病院生命倫理カンファ 明日から

2月に以下のエントリーで予告したカンファが
いよいよ現地時間の明日、明後日の2日間、開催されます。


以下に見つけたのは、いわば、その告知記事。



この記事で
主催の子ども病院Truman Katz 生命倫理センターのディレクター、Wilfond医師は
「すべての子どもにそれぞれが必要とする医療を保障する」といった表現を使って
生命倫理と医療施策の複雑な諸問題に待ったなしの解決策を模索するタイムリーな機会」だと
まるで「すべての子どもに医療を」という方向で議論が行われるかのように語っていますが、

ここで議論のテーマとされているものは、むしろその逆と思われます。

(まぁ、小児科学会の「栄養と水分差し控えガイドライン」を書いたDiekemaなら
Wilfondの言う「それぞれが必要とする医療」の「必要」を定義するとみせて、
一定の障害像の子どもなら「利益にならない」従って「必要としていない」という話にした上で
平然と「すべての子どもに必要な医療を保障する」のだと、あのガイドラインと同じ論法
使って見せるだろうという気が、しないでもないし)

上記の記事に書かれているテーマ以外にも気がかりなものがあるので、
2月のエントリーで病院の当該サイトからコピペしたものを繰り返すと

• Under what circumstances should individual providers or healthcare institutions extend medical care to children whose families cannot pay?
• Do providers' responsibilities extend beyond the walls of the clinic? How do we balance obligations to provide better healthcare with obligations to improve other factors that influence health, such as diet, exercise, housing and education?
• Do providers have an obligation to tell families about healthcare options that are not “available” or will not be provided because of financial constraints?
• Should care to children be prioritized based on social, physical or mental health status?
o Children who have expensive technology-intensive care needs, such as ventilators, dialysis or transplants?
o Children with intellectual disabilities who require special resources, yet will remain dependant on society?
o Children who have mental healthcare needs?
o Children who are undocumented?

• How will healthcare reform affect the goal of providing for the basic healthcare needs of all children?


・家族に支払い能力のない子どもに個々の医療提供者または医療機関が医療を行うべきだとされる状況とは?

・医療提供者の責任はクリニックの外にまで及ぶのか? より良い医療を提供する義務と、食事、運動、住まいや教育など、健康に影響するその他のファクターを改善する義務とのバランスをどのようにとるのか?

・経済的な制約のために「対象外になる」または提供されない治療の選択肢について、家族に知らせる義務が提供者にはあるか?

・社会的、身体的または知的状態に応じて、子どもたちへの医療に優先順位をつけるべきか?

たとえば、
  ・人工呼吸器、人工透析や臓器移植など高度技術による高価な治療が必要な子どもは?
  ・特殊な資源を必要とする知的障害があり、社会に依存し続けるであろう子どもは?
  ・メンタル・ヘルスのニーズ(つまり精神障害?)のある子どもは?
  ・不法入国・不法滞在の子どもは?

・すべての子どもの基本的な医療ニーズに応えるというゴールに、医療制度改革はどのように影響するか?



シアトルこども病院のカンファのページはこちら。プレゼンターの顔触れはこちら

Ashley事件関連以外の知識が全くない私にとって面白いところでは Arther Caplan, John Lantos。

それからAshley事件で
どう考えても動員されて苦し紛れの擁護発言を吐いていた Joel Frader。
メール討論では、明らかにFostにびびりまくっていたよ、この人)

おや。そういえば、初回カンファから必ず大きな顔を見せていた大親分、
そのNorman Fostの名前が、今回は、なぜか、ない。

Fostと並ぶ、同センターの大のオトモダチ、Rossの名前もない。

ふ~ん……。

そういえば、Lantos医師って、
いきなり痛烈な批判で“Ashley療法”論争に躍り出てきたと思ったら
その勢いのまま去年もこのカンファに出て来ていたり、
最近はNICUでの「無益な治療」停止の慣行を是認する論文を書いたり、
いつだったか、ふと気がつくと、Diekemaとも共著論文があったり……ふ~ん……。

何度か、このカンファのWebcastのいくつかを眺めてみたり、
A事件を追いかける過程で、カンファに登場する倫理学者のその他の言動に触れたりすると、
要するに米国で初めて小児科領域での生命倫理の専門機関として2005年にできた
Truman Katzセンターというのは、

米国の小児科医で生命倫理の周辺であれこれ色気がある先生方にとっては
燦然と輝く“あこがれの登竜門”なんだろうなぁ……と。


上記、カンファのサイトから、例によってWebcastで生中継されるようです。
興味がおありの方は、ぜひ。

見られたら、どうだったか教えてくださいね。