日本のケアラー実態調査

去年のケアラー連盟の創設については
以下の2つのエントリーで紹介してきました。


そのケアラー連盟が、NPO法人介護者サポートネットワークセンター・アラジンと共同で
厚労省老人健康推進等事業として、都市部、都市近郊、農村部の全国5地域を対象に行った
「ケアラー(家族など無償の介護者)を支えるための実態調査」の結果がまとめられました。

ケアラーを支えるために
 家族(世帯)を中心とした多様な介護者の実態と必要な支援に関する調査研究事業報告書」

調査方法は、2万世帯を対象とした質問紙調査と、200人のケアラーを対象としたインタビュー調査。

この調査におけるケアラーの定義は
「介護、看病、療育、世話、心や身体に不調のある人への気遣いなど
ケアの必要な家族や近親者・友人・知人などを無償でケアする人」とされ、
こうした広範囲な定義によるケアラーの実態調査は日本で初めてとのこと。

いくつか、結果の中からデータを拾ってみると、

・ケアラーの3分の2が女性。ただし年齢が上がるにつれ男性も増える。
・ケアラーの13人に1人は育児と介護の両方を担っている。
・12人に1人は20年以上ケアをしている。
・4~5人に1人は睡眠が中断されている。
・9人に1人は自由時間が1時間未満。
・8人に1人は協力してくれる人が誰もいない。
・身体の不調を感じている人は2人に1人。そのうち20人に1人は受診したくてもしていない。
・こころの不調を感じている人は4人に1人以上。そのうち20人強に一人は受診したくても出来ていない。
・7人に1人がかなりの負担、12人に1人は非常に大きな負担と感じている。
・5人に1人が孤立感を感じている。


結果のポイントとしては、

(1) 地域には様々な年代やケアを担うケアラーが高い割合で存在していること。
(2) ケアラーの精神的拘束感が強く、心身とも健康管理ができにくいこと。
(3) 仕事や社会活動の機会が減り、経済的負担も大きいこと。
(4) ケアラーの望む支援は、
   ① ケアラーの緊急時などにも柔軟に対応できる
    ケアをしている相手への十分なサービス。
   ② ケアラー自身への経済的支援策
   ③ 行政や専門職の理解
   ④ ケアと仕事の両立
   ⑤ ケアラーへの直接的なサービスなど。

この結果を受けてまとめられた提言を要約すると、

① 地域に、きめ細かくケアラーを支援するため
 10万人に1か所程度、地域のすべての住民に開かれ24時間対応の
 「包括的地域生活支援センター(仮称)」を

 また、3万人に1か所程度、ケアラー支援の拠点として
 「ケアラー支援センター」を作る。

② ケアを必要としている人への包括的で総合的な
 アウトリーチ型の地域生活支援サービス体制を構築する。

③ ケアラーとケアが必要な人が、ともに尊厳や健康を守り、社会生活を送れるようにする。
 ヤング・ケアラーの支援のためには学校と連携する。

④ 各種調査や施策によってケアラー支援体制を整備構築し、
 ケアラ―支援推進法(仮称)など、国と自治体の取り組みを進める。

⑤ 施策の立案、実施、評価のすべての場面にケアラーの参加を保障する。


私が個人的に最も印象的だったのは、
報告書で何度も繰り返されている「アウトリーチ型」という言葉。

これは私が当ブログの中で「支援する側から迎えに行く支援」と呼んできた考え方とも重なり、
とても共感しました。

「支援が必要なら自分から声を上げて行動を起こせ」と自己責任を問う声もありますが、
美意識で介護を語る世間のダブルスタンダードに縛られている介護者の多くは
介護を苦しいと感じれば感じるほどに自分を責め、
さらに頑張り続けるしかないところへと自分を追い詰めてしまいます ↓


介護者だって生身の人間なのだから
時にギブアップしたくなるのは誰にでもある自然なことなのだよ、
というメッセージが社会から送られ、

頑張りすぎて限界が来そうな時には
「小さなギブ・アップ」を許容する懐の深い社会と、
それを可能にするきめ細かいサービスが必要なのではないかと思うし、

本当は限界が来ているのに、既に抱え込んでしまって
支援を利用する最初の第一歩が踏み出せないケアラーを
「サービスが必要なら自己責任で声を上げろ」と待っているのではなく、
支援する側が出掛けて行ったり、調査を通して発見し、
支援する側から迎えに行って最初の一歩を踏み出すべく
背中を押してあげることも時には必要なんじゃないだろうか。

つまり、それがアウトリーチ型ということではないか、と思うのだけど。