英国女性が娘に子宮提供を決断、OK出ればスウェーデンで移植手術

英国ノッティンガムに住む女性 Eva Ottossonさん(56)が
先天性の障害のために子宮を持たない娘Saraさん(25)に
子宮を臓器提供することを決めた。

もっとも医師らに許可が下りるかどうかはこれから。

許可が下りれば手術は娘の住むスウェーデンの病院で行われ、
移植後にSaraさんの卵子と夫の精子体外受精させた胚が入れられる。

しかし子宮移植は動物実験でも今だに技術が確立されていない実験的な技術で、
マウスでわずか数匹が移植子宮から生まれているとはいえ
それ以上の大きさの動物ではまだ研究が進んでいない。

2009年に英国ロンドンの外科医チームが
ウサギで子宮移植を数例行ったことがあるが、
いずれも妊娠に至らなかった。

ドナー、レシピエント双方に大きなリスクがあるため、
まだヒトで行える段階ではないと専門家は懸念するが

BBCのインタビューでEvaさんは
「そりゃ、大手術でリスクはあるでしょうけど、私は先生方を信頼しています。
専門家のすることだから大丈夫だと思うし、それよりも娘への影響が心配です」

子宮移植では2000年に
サウジアラビアで死亡提供者から26歳の女性に行われたが
血栓から壊死し始めたために3カ月後に摘出された。

スウェーデンのGothernburg大学のMats Brannstrom医師は
実験的な子宮移植の先駆で、Saraさんは同医師の研究で適性検査を受けていた。

もっとも仮に移植が成功しても、
子宮は合併症回避のため、2,3年後には摘出される。
出産にこぎつけたとしたら帝王切開

子宮移植は技術的には心臓、腎臓や肝臓などの移植よりも難易度が高く
命にかかわる出血や、子宮への血流不良などのリスクがある。

英国では2009年の失敗の後、
資金不足と医学会からの懸念の声もあって研究が滞っていたが、
今年は子宮移植チャリティからの支援を受けて再開の予定とのこと。

この移植が認められなかったり、認められても失敗した時には
養子縁組を検討するとSaraさんは言っている。



確かに、09年に英国のウサギの実験について、
当ブログでも以下のニュースを拾っていました。


この時のエントリーを改めて読み返してみると、
この段階では、研究者の方々は、ウサギの実験がうまくいくと考えていたのでしょう。

でも
仮にこの時の実験がウサギで成功していたとして、
何匹か、正常なウサギが移植された子宮から生まれた、として、、

でも、仮にそうだったとしても、
それだけのことが、なにゆえに「2年後にはヒトでも出来る」というところまで
いとも無責任に飛躍してしまえるんでしょうか?


スウェーデンではEvaさんからSaraさんへの子宮移植手術が
果たして許可されるのでしょうか。

もしも許可されるとしたら、
そこではどのようなリスク・ベネフィット分析が提示されるのでしょうか。

まさか、きちんとしたリスク・ベネフィット分析の代わりに
「科学とテクノの簡単解決バンザイ文化」の常とう文句である
「親のこんなにも美しい愛」が振りかざされる……てなことはないでしょうが、

Evaさん、移植医がいくら専門家だからといって、
安全性が未だ科学的に検証されていない、あまりにも実験的な技術に身を任せるのは
決して「信頼」とは言わないと思いますよ……。


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そういえば、
2007年にカトリック教会が出した生命倫理問題に関する見解で
Ashley療法と、英国で当時論議を呼んでいたハイブリッド胚と並んで、
この年にフロリダで予定されていた「米国初の子宮移植」が取り上げられ批判されていました。

カトリック教会の子宮移植への批判の論点は主に体外受精技術と遺伝子診断の利用だったので、
移植そのものへの批判でもないなぁ……と当時、なんとなく考えたことを思い出しました。

これについては「介護保険情報」07年5月号の連載で書いています。