双極性障害者の自殺希望に欧州人権裁判所「自殺する権利より、生きる権利」

1月21日の補遺で拾ったスイスの事件について、
詳細がありました。


提訴していたのは57歳のスイス国籍の男性、Ernst G. Haasさん。

20年間、重症の双極性障害に苦しんでおり、
もはや尊厳のある生を送ることができないとして
2回の自殺を試みるが、いずれも失敗。

自殺幇助に使われる処方薬のペントバルビタールを使えば確実に死ねると考えつく。

もちろん処方してくれる精神科医はいないので、政府や裁判所に対して、
苦しまずに確実に自殺できる支援を受けることはプライバシー権だと
再三に渡って訴えたが、いずれも失敗。

その後170人の精神科医に当たったが
誰も処方してくれなかったという。

そこでヨーロッパ人権宣言の8条のプライバシー権を主張して
ヨーロッパ人権裁判所に提訴していたもの。

1月20日、同裁判所が判決を下した。判事の全員一致。

確かに2002年の英国人女性Diane Prettyの判決で
生きているのが尊厳がなく苦しいなら自殺する権利を認めているので、
第8条は自殺する権利を認めているように見えなくはないが、

一方、第2条は生きる権利(the right to life)を保障しており、
多くの参加国が自殺する権利よりも生きる権利を重視している。

(自殺幇助用の毒物の処方には
医師の確認や精神科医のアセスメントが必要とされる)薬の処方システムは、
弱い立場の人たちが性急な決意をしたり濫用されることを予防するためのものであり、
特にスイスのように自殺幇助が合法である国では重要。

自殺幇助が容易に行われる国での濫用のリスクは決して侮れない。

自由意思による自殺希望の確認のためには
医師と精神科医による診察を経ての処方はセーフガードとして必要。



んー……この記事からだけでは、
裁判所の論点がイマイチはっきり伝わってきませんが……。


ダイアン・プリティ裁判についてはこちら


【29日追記】
Christian Institute も取り上げていました。
http://www.christian.org.uk/news/no-convention-right-to-assisted-suicide-says-ehrc/