セルビア人を殺して採った臓器を密売、巨大犯罪組織のボスは現コソボ総理大臣

――ことの起こりは08年11月。

コソボの空港で搭乗を待っている間にトルコ人男性が気を失って倒れた。
男性の腹部には生々しい大きな傷が……。

翌日、コソボ警察はMedicusというクリニックで74歳のイスラエル人男性を発見する。
彼は誰かから盗んだものと承知で腎臓を買うために来ていて、
そのために、9万ユーロを支払っていた。

腎臓提供に報酬を払うと偽っては、
ロシア、モルドバ、カザフ、トルコから人を連れてきて腎臓ドナーにしていたらしい。

買いに来るのは、ポーランドイスラエル、ドイツなどの患者。

組織的な臓器のトラフィッキングが行われていたとして
14日にコソボの首都Pristinaの地方裁判所で始まった裁判で
被告となっている7人の医師の中には、高名な医師も含まれている。

しかし、この話、一医療機関で行われていた臓器の密売に留まらない。

Medicusで行われていたことは、コソボ解放軍(KLA)がもう10年来やってきた、
臓器、麻薬、武器の密輸の組織犯罪の一部に過ぎないというのだ。

しかも、その首領は、
12日に行われた初めての選挙で勝利宣言をしたばかりのコソボのHashim Thaci総理大臣。

彼には長年独自に組織したDrenicaというグループがあり、
Drenicaのメンバーを多数KLAに入れることによって、KLAを牛耳ってきた。

もともと1999年にコソボ戦争が終わった後2000年にも、
セルビア人が殺されて臓器を採られているという訴えがセルビア人から出ていた。
その段階で、臓器狩りの首領がThaciだということは取りざたされた。

2年前にヨーロッパ評議会がこの件での調査を命令。

旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷検事からは
KLAの幹部を捜査しようとしたら妨害があったとの証言も。

戦争当時からセルビア人をアルバニア側に掴まえてきては
6か所の秘密の収容所に分散しておいて、狩り取り施設に医師が来て待機すると
順次場所を移されて、頭を銃で撃って殺し、臓器を摘出していたものと思われ、
08年8月までの犠牲者の数は20-30人とみられている。

自分の身の上に起こることを察したセルビア人たちは
身体を切り刻むのだけはやめてくれろと懇願したという。

ヨーロッパ評議会の調査を行ってきた人権調査官の報告書が
このほど評議会に提出されることとなり、Guardianがその内容を報じたもの。

ただし、調査官は、一番の問題は
99年当時から、KLAの実態を知りながら、コソボの安定を最優先すべく
見て見ぬフリをしてきた西側国際社会の姿勢にある、と指摘している。

なおMedicus事件の7人の被告は全員、罪状を否認。
コソボ政府も、報告書の指摘については全面否定。

2000年の臓器狩りに関係した人物が
今はThaci政府のアドバイザーとして要職に就き、
医療問題を担当しているという。