「世界作業療法の日」に寄せて

以下の「作業療法研究室」というブログによると、
10月27日は「世界作業療法の日」なんだそうだ。


娘を通じて様々な医療の職種の人たちと出会ってきた中で、
OTさんは医療の中で患者の“生活”に最も近い職種の1つだと私は感じていて、

娘の施設でも、もちろん個々人のキャラはあるとしても、
リハ職の人たちが活躍できて存在感が大きくなっている時というのが
そこで暮らしている入所者の生活が最も生き生きと営まれていて、
そこで働いている多職種の人たちの連携も関係も一番上手くいっている状態という気がする。

(もうここ数年、それを制度が一番邪魔していることにムカついてならない)

昔、ほんのちょっとの間
各領域で活躍しているOTさんを取材して紹介するシリーズを
「OTジャーナル」でやらせてもらったことがあって、その仕事でも、
やはりOTさんの視点が医療の中にあるということは大きいと感じたし、
地域と医療を繋げるポテンシャルの大きさも毎回、痛感した。

そんなこんなで、OTさんをはじめセラピストの役割が
もっと認知・活用されてほしいと常々願っている。

早い時期からちゃんとポジショニングしてもらえるかどうかで、
その後の身体の変形はずいぶん違うと思うのだけど、
小規模のディだとOTさんの関わりがないまま、
重症者がただバギーに座らされていたりする。

次の介護保険の改定で訪問リハの推進が論点になっているらしいので、
もっと地域に出ていけるように制度整備がどんどんされていくといいと思う。

介護保険情報」10月号の特集「訪問リハを推進するために」の
日本作業療法士協会会長、中村春基氏のインタビュー
「地域に5割の作業療法士を配置し訪問リハなどを推進」によると、
訪問リハに従事しているOT協会の会員は1838人。
全会員数から休業者を引くと訪問リハに従事しているのは5%。

日本作業療法士協会は08年から「作業療法5カ年計画」を展開し
拠点整備と人材育成を通じて地域に作業療法士を配置する計画を進めているとのこと。

中村氏は、病院に5割、地域に5割という配置を目指すとして、以下のように語っている。

地域にはいろいろな方がいます。難病、うつ、発達障害、高齢者など。そうした中にあって、リハを行う作業療法士介護保険医療保険にとどまらず、障害を持っているすべての方にサービスを提供することを考えています。

……(中略)……

作業療法士は日常生活上の様々な障害に対してアプローチしますので、訪問リハのように身近なところにいることはとても重要です。

介護保険情報」2010年10月号 p.13


また同じ特集の中のインタビュー
「地域での暮らしを支えるために言語聴覚士の活用を」で
日本言語聴覚士協会・副会長の長谷川賢一氏と理事の山口勝也氏が
失語症などコミュニケーションや嚥下障害の問題を抱える人への支援に
STが関わることのポテンシャルについて語っている。

例えば

摂食・嚥下障害については、終末期の方へのアプローチも大切であると痛感しています。状態が悪化していく中でも、安全で楽しみとなる食事ができるように、食事の形態や解除方法などの工夫を具体的にアドバイスできるのがSTです。

介護保険情報」2010年10月号 P.17


この前のシンポでもそうだったのだけど、
安楽死や終末期医療の問題を議論する人の多くは、
なぜか在宅医療・訪問看護やリハ、介護にあまり興味を示さないように感じるのは
私の気のせいなんだろうか。

病院死と、医師にできること・できないことだけを念頭に
「苦痛がある」とか「ない」とかが議論され「安楽死の是非」が語られていくような気がする。
「口から食べられなくなったら死」についても同じ。

安楽死の是非を語る前に、
もっと興味を持つべきこと、知るべきこと、考えてみるべきこと、
まだまだいっぱいあると思うのだけど――。


関連エントリーとして、
以下のワークショップも、カナダ・アルベルタ大学の作業療法学科から。


こういう視点すらないまま痛みがあるなしを語り安楽死を語るより、
まずは謙虚に、こういう視点や姿勢から学ぶことを始めるべきでは? と私は思うのですが。