ソーシャルワークの立場からの“A療法”批判

今年4月の論文。
こういう立場からの批判がもっと出てくるべきだと、ずっと思っていた。

Ashley’s Case: The Ethics of Arresting the Growth of Children with Serious Disability
by Gary L. Stein,
Journal of Social Work in Disability & Rehabilitation,
Volume9, Issue 2&3 April 2010, Page 99-109



This article analyzes the justifications and ethics of attenuating the growth of children with serious disability. It considers the case of Ashley, a child with profound developmental and cognitive disabilities whose growth was attenuated through high-dose estrogen treatment and surgery. The goals of Ashley's parents and physicians were to keep her small, thereby making it easier for her parents to care for her at home. Perspectives supporting and opposing growth attenuation are presented. It is suggested that community resources and supports, rather than medical strategies, are necessary to address the social challenges of community living.


結論としては、
子どもを地域でケアしていくには、医療の戦略よりも、地域での資源と支援が必要なのだ、と。

これは、これまでにも繰り返し指摘されてきたことではあるのだけど、

実際に地域で支援に当たっている職種の声が出てこないと、
その必要性そのものが部外者にはなかなか具体的に理解されないのだろうと思う。

障害児教育の分野なんかからも、
もっと重症児の認知とかコミュニケーションなどについて、
医療のなかから見えていることだけが全てじゃないという具体的な話が出てくるといいのだけど。

              ―――――――

いつも揚げ足取りしているみたいで気が引けるけど、
大事なことだから、ここでも事実誤認を指摘しておくと、

Ashleyに行われた身長抑制の目的を
親も医師も在宅介護の負担軽減のためだと主張していると
多くの人と同じ誤解を、この著者もしている。

この事実誤認をする人は本当に多いのだけど、
実際にAshley父のブログをちゃんと読んだ人なら起こり得ない間違いなので、
論文を書こうかという人がその程度にしか資料を読んでいないことが、いつも不思議でならない。

担当医らは06年の論文で確かにそんなことを理由として書いた。

メディア報道でも07年当時の論争でも、
勝手にそう思い込んで議論した人は多かった。

でも親は実際はそんなことは言っていないし、
それは目的ではなかったとブログで何度も明確に否定している

少なくとも04年に要望した時点では、
親の目的はあくまでも本人のQOLの維持向上だった。

ただし、論争の中で、もっと年かさの重症児の親たちから体験談を聞く中で、
確かに在宅介護の時期を引き延ばすというメリットもあることに気付かされたと
ブログに追記されてはいるし、

その方が世間に通りが良いことをすでに彼らも学習したとすれば、
今後、成長抑制療法が一般化されていこうとする際には
親の介護負担の軽減がひいては本人の最善の利益だという論理で
押されていくのだろうとは思うけれど。