オレゴン州の尊厳死法、セーフガードは機能せず

英国の自殺幇助合法化運動の広告塔Debbie Purdyさんの得意な殺し文句は
「米国の一部の州やヨーロッパのいくつかの国では法制化されて、ちゃんと運用されているのに、
英国で合法化できないというのは英国人を信頼しないというのか」だし、

日本でも、去年12月に
日本尊厳死協会の井形理事長が同様の発言をされましたが、

Oregon州で自殺幇助に抵抗活動を続けている
Oregon Right to Lifeからの転載記事によると、
オレゴンの「尊厳死」法で、セーフガードは機能していない、と。

Oregon’s Assisted Suicide Experience: Safeguards Do Not Work
Web One Directory Review,  reproduced from Oregon Right to Life


その証拠として挙げられている4つのケースの概要を以下に。

・第一例(ウツ病患者)

20年間乳癌と闘ってきた80代半ばの女性。
主治医は致死薬の処方を拒否。
2人目の医師は女性をウツ病であると診断し、
やはり自殺幇助を拒否。

そこで女性は自殺幇助アドボケイトの手を借りて
協力してくれる医師を紹介してもらう。

その医師は女性と知り合って2週間半後に処方した。

つまり、Oregonの尊厳死法適用の第一例はウツ病患者だった。


・Mathenyケース

43歳のPatrick Matheny氏はALS患者。
薬を手に入れたのは宅配便で。

手に入れた後で、飲む決断をするまでに病状が進行し、
自分で飲み込めなくなっていたため、義理の弟(兄?)が手伝った。

尊厳死法では、自殺の行為そのものを手伝ってはいけないことになっているため、
裁判所の判断が求められたが、裁判では
尊厳死法は自分で飲めない人を差別している、と判断した。

自力で飲みこみの出来ない患者が
自殺幇助の限界ラインを医師による致死薬の注射まで広げた。


・Cheneyケース

認知症の初期の高齢女性Kate Cheneyさんを、
娘が自殺させようとそそのかし、医師をとっ換えひっかえした挙句に実現したケース。

複数の医師が本人の認知症と娘からの誘導を理由に拒否。
本人は拒絶を受け入れたが娘が腹を立ててセカンドオピニオンを求め、
最終的に致死薬が処方された。


・Freelandケース

2004年5月、米国精神医学会で報告されたケース。

癌患者のMichael Freeland(63)は死が差し迫っていると診断され、
尊厳死法で致死薬を処方された後、2年近くも生きた。

処方した医師は、Freelandの精神科の診察の必要を認めなかったが、
当時から症状としての自殺念慮があったと言われていた。

その後、当局によって意思決定能力が否定されたが
しかし、致死薬は回収されないままだった。

Physicians for Compassionate Careが介入し、痛みと精神科ケアを提供。
Freeland氏はその後、致死薬によらない自然死をとげた。

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ちなみにOregon州のメディケアは
1998年に自殺幇助を給付対象として州民の税金で負担することとした。
一方、適切な痛みのコントロール、障害者への適切な生活支援、
また延命治療の一部は給付対象となっていない。



なお、最近行われたベルギーでの安楽死の実態調査でも、
以下のようにセーフガードが機能していないことが明らかになっています。