幇助自殺者が毎年1割ずつ増えるオランダで「安楽死クリニック」求める声

2009年にオランダの安楽死法による安楽死は2636人で、
前年より13%の増。

オランダの去年1年間の死者数の2%に当たり、
2636人のほとんどは自殺幇助ではなく安楽死(または“慈悲殺”)。
また80%以上が癌患者で、80%以上が自宅での死だった。

そのうち、
医師が法定の手続きを十分に遵守していなかったケースが9件あった。

その前の2008年にも10.5%の増加だったことから
オランダでは安楽死に特化した医療施設の必要を説く声が上がってきている。

安楽死法の対象者要件を満たしていても
引き受けてくれる医師が見つけられない患者がいることから
対象者要件を満たす患者を引き受け、
法律上必要な手続きもすべて行えるようなクリニックを、と。

今回も前回以上の増加をみせたことから、
専用クリニックを求める動きが加速しそうな気配。

Dutch euthanasia cases up 13 per cent last year
The Globe and Mail, August 11, 2010


こちらのエントリーで読んだ記事によると
オランダの安楽死法では、死に至る行為を他者が行った場合を「安楽死」とし
その行為を自分が行った場合を「自殺幇助」と区別しているとのこと。

しかし、この記事を書いた人が
どうして、そこに「慈悲殺」を持ちこんでいるのか、
どうして「安楽死」と「慈悲殺」を同じものと考えるのか、
理解できない。

まぁ、それは記事が妙なだけで大した問題ではないとしても、

重大だと思うのは、
そんなクリニックが出来て、そこで法定手続きの一切が行われるということは
まず一人目の医師が診察して、「不治の病で耐え難い苦痛がある人が
十分な説明を受けた上での自己決定」という対象要件を満たしていると確認し、
次にもう一人の医師が同じ確認を行うことが法律で求められていることの
セーフガードとしての意味が全くなくなってしまう……との懸念が
一切触れられていないこと。

また、
この記事では触れられていませんが、
6月の以下のエントリーで同じ統計結果を取り上げた記事を紹介しており、
こちらでは緩和ケアの崩壊と医師による法の恣意的な拡大解釈の可能性に言及されています。


そういえば、オランダでは2月に、一部の学者、政治家から
別に不治の病でなくたって、これ以上生きるのが嫌だと自己決定するなら
70歳以上の高齢者には自殺幇助をという声も上がっていましたっけ。