やっぱりCNNが飛びついたGA州ALS患者の「臓器提供安楽死」希望

この話、25日に
GA州のALS男性が「臓器提供安楽死」を希望のエントリーでとりあげた時には、
まだローカル・ニュースだったのですが、

これがローカルにとどまるわけはないだろうと予想していたところ、
案の定、CNNが大きく取り上げました。

冒頭、heartbreaking story と紹介し、
Phebusさんのこれまでの生涯を何枚もの写真で描きながら
そこに長々とPhebus氏自身と家族のインタビューをかぶせています。

以下のサイトにビデオがあり。



ちなみに「臓器提供安楽死」とは、
トンデモ倫理学者のJulian Savulescuが5月にBioethics誌で提案したばかりなのですが、

「死なせてから採る」「採るために死なせる」いわゆる「心臓死後臓器提供:DCD」とは違い、
生きて心臓が動いている状態で麻酔をかけて、採れる臓器という臓器を摘出し、それによって死なせる、
「臓器を採るという方法で殺す」という安楽死の形態のことです。

ただSavulescuが提案している「臓器提供安楽死」の対象者は
「生命維持ケアが既に無益だという段階の患者が自己決定した場合」なので
ALSの診断を受けても、まだ生命維持ケアを必要とする段階に至っていないPhebus氏は
Savulescuの提案の対象ですらありません。




今回のCNNの報道に、25日のローカルの報道から特に目新しい内容があるわけではないのですが、
特に目についた点としては、

夫婦の語りの中で、25日に引き続き、やっぱり印象的なのは
Garyさんの「私は死刑宣告を受けたのだから」「私の前にはもう人生はないのだから」

また、妻が夫の気持ちを代弁している場面で使った
今の夫の状態が本人には 「屈辱的 humiliated 」で「尊厳がない indignity」という言葉。

記事本文には、救急医のコメントとして
ALS患者の10%は20年以上生存していること、
現在の米国で、こんな要望をかなえられる州はないこと、などが語られている。

それから、キャスターが最後に「すべり坂をいう懸念の声に対しては?」と質問し、
「もうちょっと具体的に」とPhebusさんから言われて、
臓器の方が命よりも大事なんですか」と言い換えたこと。

(その質問の鮮やかさに、はっとして、
誰かが送りたいのは、まさに、そのメッセージなんだわ……と)

もう1つ、この記事のコメント欄での
「人間はみんなターミナルですよ。一体どこで線を引くんですか」
「決めるのは自分・自分だよ」というやりとり。

まぁ、
こうした乱暴な(こちらの立場の人の口調は往々にして2チャンネル的)「死の自己決定権」論が
法も倫理もすっ飛ばし、関連の事実をきちんと知ることの必要とか、
丁寧に議論しようという姿勢の必要すら勢いだけでぶっ飛ばしつつ、
世論に浸透していくことこそが、

「生きるに値しない命より、臓器の方が大事」というメッセージを送りたい人たちの
狙いなんだろうし……。

着実に、そして周到に、したたかにステップが踏まれていく――。