“ロックト・イン症候群”の男性が「妻に殺してもらう権利」求め提訴(英)

2005年に仕事先のアテネ脳卒中を起こして“ロックト・イン”になった
54歳の Tony Nicklinsonさんは、頭と目以外はどこも動かすことができない。
文字盤を使って会話は可能だが、面倒なので最近はコミュニケーションの意欲をなくしているとのこと。

ターミナルではなく苦痛があるわけでもないが、
全介助で、ろくに知りもしない相手に赤ん坊のように世話をされる生活に倦み、
この先まだ20年もこうして生きたくない、
こんなことになると分かっていたらアテネで倒れた時に
救急車なんか呼ばなかった、と。

首から下が麻痺しているNicklinsonさんが自分で自殺できる唯一の方法は餓死のみ。
それはしたくないので、妻に毒物を注射してもらって死にたいのだという。

DPPの自殺幇助ガイドラインで起訴判断に公益が勘案されるのは
あくまでも死ぬ「手伝い」のみであり、
自分で自殺行為を行うことができないNicklinsonさんの場合、
妻の行為は「自殺幇助」ではなく「殺人」と扱われることになる。

ガイドラインは殺人については、慈悲殺であろうと殺人であり、
殺人は起訴が基本としている。

そこで、Niclinsonさんは
自分の場合のように自分で自殺が出来ない人の「同意殺人」の場合にも
公益を検討してもらって、妻が不起訴になるよう、法の明確化を求めている。




これら3本の記事はそろって、この男性を”ロックトイン”と書いているのですが、
いつものことながら、本当に”ロックトイン”と呼ぶべき状態なのかどうか……?

MS患者のDebbie Purdyさんが自殺幇助に関して求めた法の明確化を、
“ロックト・イン”のNicklinsonさんが今度は殺人に関して求めている、ということですね。

手を休めることなく間を置くことなく次々に策が打たれ、波状攻撃が続いて
英国政府に向けて法改正へのプレッシャーがかけ続けられているなぁ……という印象。


私がちゃんと読んだのは今のところGuardianだけですが、
BBCにある妻の言葉では

「他の人と同じ権利を求めているだけです。
あなたや私は自殺できますが、この人は自分で死ぬことが出来ないんですから」と。

いや、でも、餓死するという方法があるのだとしたら、
この訴訟は「自殺する権利」を求めているのではなくて、
「自分が選んだ方法で殺してもらう権利」に過ぎないんでは?


もう1つ、頭に浮かんだ疑問として、

奥さんの方が「罪に問わないと約束してもらったら、
私が毒物を注射します」と言っているのだけど、

毒物って、そんなに簡単に手に入るもの?
その場合、毒物を調達し渡した人物の罪はどうなる?

……てなことをあれこれ考えると、

この訴訟の背後にも、やっぱりC&Cの影が、チラつくどころか、
毒物入り注射器を山ほど準備して背後霊のように貼りついているのが見えるような……?


20日追記】
十分に予想できたことだけれど、
Debbie Purdyさんが「応援する。自分にできることはなんでも」と言っている。

このTelegraphの写真を見ても、”ロックトイン”なのかなぁ……?
脳卒中の後遺症で重症障害を負った人」というのが正しいような気がする。



20日追追記】
Guardian:奥さんのインタビュー・ビデオ。

「私にとってしんどい」と言い、介護の大変さを語る言葉の方が多い気がする。
パソコンで回想録を書いていて、テレビでラグビーの試合を見ると前のように夢中になる、という人について、
「この人にはQOLというものは全くありません」と、2度も繰り返されている……。