Kevorkian医師「PASは医療の問題。政治も法律も関係ない」:映画“You Don’t Know Jack”

これまで、以下のエントリーやいくつかの補遺で追いかけてきた
Jack Kevorkian医師の伝記映画(アル・パチーノ主演)ですが、
私はハリウッド映画だとばかり思い込んでいたのですが、
HBOというケーブルテレビ局がオリジナル映画として作成したもののようです。
(ハリウッド映画でなくて良かった。日本で公開されたら……と気が気じゃなかった)


24日土曜日に最初の放送があり、
メディアにはその前後から関連記事がわんさと登場しています。

こちらの雑誌記事によると
今後5月16日までの間に13回、放送予定。

この記事は「客観的で正確な描写でDr. Deathに息吹を吹き込むと同時に
3つの州で合法とされているだけで何年も議論が低迷してきた
医師による自殺幇助(PAS)を一気に国民的課題として表面化させた」と。

また、Kevorkian医師自身が
「法律が道徳的でないと感じるなら、その法律には従わないことだ」と。

あちこちの記事に寄せられるコメントを見ても、
だいたい、こういう路線の捉え方が多く、
米国での医師による自殺幇助合法化に向けて
世論が一気に傾いて行くことが懸念されます。

HBOのYou Don’t Know Jackのサイトはこちら

作品の一部や撮影風景、出演者へのインタビュー、
Kevorkian医師自身へのインタビューなどが見られます。

HBOに寄せられた映画へのコメントはこちら

ざっと最初のあたりを読んだ限りでは、
みんな安楽死に大賛成。

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上記、HBOのサイトのプロモを見て、私が一番強烈な印象を受けたのは、
Kevorkian医師の「医療の問題なんだ。政治も法律も関係ない」という言葉。

これは、Ashley事件の立役者だと当ブログが考える倫理学者のNorman Fostの
無益な治療論やAshley療法、成長抑制療法についてのスタンスと、まったく同じ。

こちらのエントリーでも、ちょっと書いているのだけど、
私は前から、医療を含む科学とテクノロジーの世界の人には、往々にして、
自分たちのいる世界と、その外の世界の大きさについて大きな誤解があるんじゃないか
という気がしてならない。

つまり、医療の世界とか、科学とテクノロジーのそれぞれの専門の世界は
政治や経済や法律を含む「文化」や「社会」よりも大きいと
どこかで勘違いしていないだろうか、ということ。

「専門性が高い」ということが、「その他の分野よりも上位にある」という認識に繋がり、
それは1つの専門性においての優位であるにもかかわらず
勝手にそれを普遍的な優位と勘違いしてしまって

いくら専門性が高くとも、その分野は文化の一部であって、
文化がその分野の一部に内包されているわけではない」という単純な事実、
つまり、文化や社会の方が大きいという至極当たり前の事実が
見えなくなっているんじゃないだろうか。


そして、その誤解が、急速な科学とテクノの発展で、さらに助長されているんじゃないのだろうか。

もしかしたら、無自覚なだけではなくて、
Fost医師みたいに、どう考えても自覚的にやっているとしか思えない人もいるのだから、
科学とテクノは法の束縛から自由になろうと、駄々をこね始めていることを
個々の問題を考える際に背景として念頭に置いておかなければならないのだろうと、改めて思う。