DALY・QALYと製薬会社の利権との距離についてぐるぐるしてみる Part 2

はたして、前のエントリーで書いた話と、どこまで関係しているのか、していないのか
その距離間がしかとは分からないから、ぐるぐるしてみるだけなのだけど、
その不思議な財団法人のサイトを覗いているうちに頭に浮かんできたことを。

巨大製薬会社の、特にSSRI抗うつ剤を巡るスキャンダルや訴訟については
当ブログでも以下のエントリーなどで、たびたび取り上げてきましたが、


米国ではビッグ・ファーマのデータ操作や抗うつ剤の副作用や著名研究者との癒着が
もうずいぶん前から非常に大きな社会問題となっているというのに、
日本ではそうした事実が全く報道されず、
長いこと、精神障害当事者の方々が
ネットで問題提起をしておられるだけでした。

ところが、最近、やっと日本のテレビや新聞も
特にSSRIを中心に抗うつ剤には攻撃性を起こす副作用があることを指摘し報道するようになりました。

もちろん、そこには厚労省の動きもあったし、
日本の多くの当事者の方々が長年、薬に傾斜しすぎる精神科医療のあり方に疑問の声を挙げ、
闘いを続けてこられた成果があることは間違いありません。

しかし、それだけでもないのでは……と私は考えています。

ずっと英語ニュースを追いかけていると、
ここ数年で、明らかに米国内の風向きが変わったように思われるのです。

ターニングポイントになったのは、やはり2年前からのGrassley上院議員らによる
製薬会社と研究者らの癒着についての徹底した調査ではなかったでしょうか。
議会の調査が入ったことによって、それまで噂でしかなかった癒着の実態が
次々に明らかになりました。

最もショッキングだったのは、
当ブログでも何度も取り上げたBiedermanスキャンダルでしょう。
(未だに日本では報じられていませんが)

もちろん、それらの実態が解明されるにつれて、
精神科医療の在り方に疑問を呈する専門家の声も数多く上がるようになりました。
副作用のリスクも改めて指摘されました。

同時に、去年は特に施設入所の高齢者や認知症患者への
精神科薬の過剰投与の問題も大きくクローズアップされ始めました。

そして、米国では、ついに
保険会社が抗精神病薬の処方への給付に慎重になったとか。

こうなっては、製薬会社の方でも、
そろそろ精神科薬では、もう十分に利益を上げ尽くしたと見切りをつけるほかない。

日本のメディアがやっと抗うつ剤の副作用を取り上げるようになった時期は、
精神科薬でのボロ儲けの限界を巨大ファーマが受け入れた時期に
ちょうど重なっているのではないでしょうか。

米国では(ということは世界中で)製薬会社のマーケティングのターゲットは
精神科薬から、他の領域へと流れが変わりました。
次のターゲットは、どう考えてもワクチン。

なにしろ、世を挙げて「予防医療で医療費削減を」がトレンドです。

去年11月の
リスクの“リ”の字もなく“黄金時代”に沸くワクチン開発記事によると、
結核アルツハイマー病、尿路感染、性器ヘルペス、植物起因のアレルギーから
旅先での下痢まで、予防するワクチンが5年以内に売り出されるとされています。

しかも、ワクチン開発にはゲイツ財団のお金がついてきます。
そして、このお金に「ビジネスモデル」がくっついてくるのです。

ゲイツ財団、UNICEF、WHO、世界銀行などが作っている
Global Alliance for Vaccines and Immunization(GAVI)が
途上国のワクチン開発・製造に競争原理のビジネスモデルを持ち込んだ自らの努力により
ワクチンの価格が下がって、途上国で接種を受けられる子どもが増えたと自画自賛し、
これからも同じくビジネスモデルでマーケット形成に力を入れていく、と宣言。

奇しくも、それもまた去年11月の出来事でした。
ゲイツ財団とWHOがいう「ビジネスモデル」は当然のことながらDALYにつながっています。

Global Burden of DiseaseというDALYプロジェクトで
ゲイツ財団と提携しているLancet誌には、その前後から
ワクチン関連の論文がわんさと載るようになった気がするのですが……
私の気のせいでしょうか……。

そして、最近とみに、あぁぁぁぁぁ、イヤ~な感じだなぁ……と思うのは、
今年に入ってから日本の新聞やテレビが
やたらとワクチンを取り上げるようになった感じがすること。

日本はワクチン後進国だ、もっと欧米並みに子どもにワクチンを打たないと……との論調で。


――こう、眺めてくると、

DALY・Global Burden of Disease プロジェクト・WHO・ゲイツ財団・予防医療・ワクチン……

DALYと同類であるQALYのセミナーが製薬会社の主催で開かれることも、
最初に考えた以上に、なにやら、みょ~に、得心できる話なのかも……?





巨大ファーマがかつてのゼネコンなのだとしたら……(2009/9/29)
(その他「科学とテクノのネオリベラリズム」の書庫に多数)