ドナーカード保持者に臓器移植の優先権(イスラエル)

Lancet誌に発表された Sheba 医療センターの Jacob Lavee教授の論文によると、


臓器不足に対応するため、イスラエルが世界で初めて
ドナーカード保持者に臓器移植での優先権を認めるべく法律を改正。

署名入りのドナーカード保持者のパートナーや近親者も
臓器移植が必要となった際には順位を繰り上げてもらえることになる。

ただし優遇措置は署名後1年以上が経過したカードのみ。
新法は2011年1月に施行。

移植の順はあくまでも医療上の必要度によるべきだとの批判もあるが、

Lavee教授は、
緊急に移植を必要とする患者が優先される原則は変わらない、
ただ同じニーズの患者が2人いた場合にはカード保持者が優先されるということだ、と。

教授自身、
このやり方は“真の愛他主義”にも
医療上の必要のみでレシピエントを決める移植の”理想“にもそぐわないことを認めつつも、

現在10人に1人しかカードを持っていない(英国の成人では4人に1人)イスラエルの現状では、
そのくらいの代償はやむをえない、

この方針で移植臓器が増えれば、それはそれで、
最大限の健康を達成するという、別種の、医療の重要な目的にかなうことになる、と。

英国の専門からは一様に懸念を表明し、
やはり臓器は必要度に応じて公平に、との原則は維持すべき、とするものの
根強く続いている「みなし同意」への議論が、また再燃する気配も。



――最大限の健康を達成するという医療の目的……だと……。

こういう記事を読むと、いつも引っかかるのだけど、
ここでも英国保健省のスポークスマンが

「これまでになく多くの人が臓器ドナー登録をしていますが、
それでもまだ、毎日3人が移植を待ちながら死んでいます。
もっとドナーが必要です。

2013年3月までに年間のドナー登録率を800人から1400人まで上げたい。
2010年までに2000万人のドナー登録、
2013年までに2500万人の登録が目標です」


いや、しかし……
移植用の臓器というのは、本来、
欲しい人みんなに行渡るのが当たり前という性格のものだったろうか……?



――で、なんだかんだ言っても、
こんなふうに”ならず者”的ルール違反で抜け駆けする人やら国が出てくることで、
科学とテクノの(金融だってそうなんだろうけど)国際競争は、どんどん無軌道になって、
やがて誰も彼もが、否応なしに仁義も理想もかなぐり捨てて、
なりふり構わず、ひたすら生き残りを目指すことを余儀なくされる――。

誰も幸せになれない世界へと向かって――。