英国の自殺幇助議論関連ニュース2本

英国の自殺幇助議論については、もう、あまり目新しい主張が出てくるわけではないのですが、
今後の議論やニュースをなるべく正しく理解するために、
一応フォローしておきたい動きとして、以下に。


Terry Pratchett criticizes assisted suicide guidelines
The Guardian, September 28, 2009

先日来、何かとメディアに露出しているアルツハイマー病の作家Terry Pratchett氏が
先週のDPPの自殺幇助ガイドラインについて批判。

いちいち警察が捜査してから公訴するかどうかを決めるというのは
制度として非効率であり、曖昧すぎる、
判定委員会のような制度を作るべきだ、と。

個人的には medical reasonsによってのみ自殺幇助は認めるべきだと思う、とも。


私の頭にすぐに浮かんだ疑問は、

事故で全身麻痺になった23歳のラグビー選手の場合などは、
Pratchett氏のいう medical reason にあたるのだろうか……。

Debby Purdyさんは、
自分が将来もう死にたいと思ってスイスに行く時に
夫についてきて欲しくて、それで夫が罪に問われないことを保障することだけを念頭に、
つまるところ「この人を訴追しないと約束して」と訴えてきた。

Pratchett氏は自分のアルツハイマー病が進行して
自分がもう死にたいと思った時には死にたいと望んで
たぶん、アルツハイマー病以外の病気については深く考えずに
“medical reason で死にたいと望む人”だけには
自殺幇助を合法化してもいいじゃないか、と主張する。


Man took wife to Swill suicide clinic
Playmouth.co.uk, September 29, 2009

Jenny Gearyさん61歳は
最も最近スイスのDignitasで自殺した英国人。

多系統萎縮症(脊髄小脳変性症の仲間)MSAだった。

Jenny さんに付き添ってスイスに行った夫が
今回のガイドラインでは十分ではない、
英国政府は自殺幇助の合法化を考えるべきだ、と。

「国民の気持ちはここ数年で変わった。
ちゃんとしたセーフガードが設けられたら、
この国は自殺幇助を検討すべきだ」と

「ちゃんとしたセーフガード」という時、
この人は、どれだけ多様な病気や障害像を頭に描き、
どれだけのすべり坂の可能性を検討して、
具体的にどういうセーフガードがあれば「ちゃんと」機能するのかを
考えているんだろうか。



みんな、自分が立っているところから見える範囲だけで
ものを言っているような気がする。

……というか、その範囲だけでものを言うことが
多くの人に、あるひとつの方向からだけ、ものごとを見せることに有効に働く……

そういう人の言葉ばかりが大きく取り上げられているような気がする。

これは、日本のメディアでも同じなのだけど――。