HPVワクチン接種後に13歳女児が死亡(英)

去年、18歳以下の女児全員にヒト・パピローマ・ウィルスのワクチン無料接種プログラムを開始した英国で、
昨日、死者が出ました。

(当初「義務化」したと書いていましたが、16歳以下では接種前に同意が必要とのことなので訂正しました。
ただ、去年から始まったプログラムは12歳女児に学校でいっせいに接種するもので、
親がオプトアウトできるとしても事実上の義務化だろうとは思います。)

14歳のNatalie Mortonさんが接種の数時間後に死亡。
クラスメイト数名も、吐き気やめまいなどの副作用があったとのこと。

NHSはNatalieさんの死とワクチン接種との因果関係が判明したわけではない、
今後の調査の結果を見ないと何ともいえない、と。

学校長は保護者らへの文書で
Matalieさんは「ワクチンに対して、めったに起きない過敏な反応が起きたため」と説明、
他にも接種後に体調不良を訴えて早退した生徒がいたことを明らかにしている。

Merck社のGardasilに比べて安価なためとして、
英国だけはGlaxoSmithKline社のCervarixを使っている。

去年10月には、接種の30分後に全身の筋肉に力が入らなくなって、
その後、今に至るまで、ほとんど病院に入院生活となった女児(Ashleigh Caveさん)も。

しかし、the Medicine and Healthcare products Regulatory Agency(MHRA)は
Ashleighさんの母親の訴えに、因果関係を否定し続けている。


Cancer jab alert after girl dies
The BBC, September 29, 2009
(BBCの記事は30日朝に読んだので、上記の内容はTimesのものです)

……と、このエントリーをアップしようとしたら、
自動的に他所のブログから拾ってきたニュースが以下の産経新聞

ああ、びっくりした。

なんと、今日、日本で、HPVワクチンが承認される……と。

知らなかった……。



ちなみに、このニュース、副作用については一言も書いてないです。

ただ、ひたすら予防効果について強調し、
例によって「海外では」と、いかに多くの国で接種されているかを並べてある。

……ということは、
英国のAshleigh CaveさんのことやNatalie Mortonさんのことは
日本では、おそらく報道されることはないのでしょう。

たしかに因果関係が確かめられたわけではないと言えばばその通りだし、

「因果関係が確かめられていない」ということは、
「因果関係の可能性が否定されたわけでも肯定されたわけでもない」と考えるのが
科学的な思考というものだと私は思うのだけど、

なぜか「確かめられていないということは因果関係がないということ」だと考えるのが、
もっぱら薬の副作用については科学的な思考だということのようだし。


【29日夜・追記】
この記事をアップした直後、夜のニュースでワクチン承認についてやっているのを見て、
ものすごく疑問に思ったのだけど、

Natalieさんが亡くなったのは英国時間で28日。

29日の今日、承認を決めた審議会が開かれた厚労省には、
このニュースは届かなかったのでしょうか? 


【30日追記】
Timesから続報。
保護者の不安感を考慮して、ワクチン接種の予定をとりあえず延期する自治体や学校が出ている模様。


【10月2日追記】
Guardianからの続報。
死後の検査でワクチンが直接の死因ではなかったとされたものの、
間接的な引き金になった可能性はある、
親も知らないで潜んでいる病気がある場合のリスクは、などの点を指摘しつつ、
予防効果の意味は大きいので、親自身が選択する以外にない、との結論。

ここでは、これまでにHPVワクチンによる死者数は
英国で1人、米国で32人とされています。


昨日、まとめたいと思っていた死亡例の詳細情報と医師による分析はこちら
Ashley事件に動きがあって時間がとれなかったので、英文のまま。


【2011年3月1日追記】
たいへんおくればせになりましたが、mghさんからコメントでご教示いただき、
Natalieさんの死因が未発見の肺がんだったとの情報が、直後に出ていたとのこと。