ゲイツ財団の私的研究機関が途上国への医療支援の財布を管理しようとしている?


民間からの史上初めての援助資金の増大を受けて
開発途上国への保健医療の援助資金の総額は1990年の56億ドルから
2007年の218億ドルへと、10年間で4倍に膨らんだ。

しかし、
必ずしも最も貧しく最も病気が多発している国に最も多く届いているわけではなく、
既に経済大国となったインドと中国にまで援助が行われている。

またエイズ対策に多くの資金が流れている一方で、
結核マラリア対策にはその3分の2しか回っていないなど、
説明のつかない不均衡が見られ、配分がうまくいっているとはいえない。

これは、グローバル・ヘルス資金が増大しているにも関わらず
民間からの慈善によって集められた資金であるために
誰もきちんとトラッキングを行ってこなかったことによるものであり、

「これまで数えた人のない金をきちんと系統的に数えてみようとする今回のような試みによって、
保健医療の資源は透明度を増し、より有効活用されるようになると思います」と
IHMEの所長 Dr. Christopher Murray

ちなみに、この研究によると
最も大きな額の資金提供をしているのは米国政府と米国拠点の民間チャリティで
2007年全体の医療開発援助の半分以上を拠出。

歳入に占める割合でいくと
スウェーデンルクセンブルグノルウェイアイルランドに続いて米国が5位。
(結構小さな国が上位を占めているといるのに胸を打たれた……)

ゲイツ財団からの資金はもちろん民間財団としてはトップで
全体のほとんど4%に達している。

Global health funding soars, boosted by unprecedented private giving
University of Washington – Health Science/UW News, Community Relations & Marketing, June 18, 2009


ただし、これは、当のWashington大学のサイトからの情報であることに注意。


でね、
その世界中のグローバル・ヘルスの財布の管理を
なんでゲイツ財団の私的研究機関に等しいIHMEが
勝手に担ってしまおう……という話になるのかなぁ……。

もう1つ、ちょっと分からないなぁ、と思うのは
ゲイツ財団から直接的に開発途上国への医療支援に流れていくお金は
医療支援全体の4%かもしれないけど、

このIHMEの研究資金やシアトル子ども病院の死産・早産撲滅運動その他キャンペーンはもちろん、
マラリア治療の研究機関やAIDSの研究機関や、その他、
もう世界中の科学・医学研究のネットワークに
人体にくまなく届けられていく血液のように浸透しているわけですね。

世界中の科学・医学研究に費やされる資金の総額なんて
どこかで分かるのかどうか知らないけど、
その中に占めるゲイツ財団の資金もなかなかバカにならないはず。

というか、実際の金額や資金の割合そのものよりも、
一慈善家が世界中の医療施策にここまで直接的に間接的に影響できる事態が
既にできてしまっていることそのものが、

いいの、本当に、そういうので──? 

慈善だから、愛があってやることだから、いいの──?
思いやりにあふれた立派な行いだから、いいの──?

なんだか、この世の中、
愛や思いやりが、どんどん怖いものになっていく気がするんだけど。