「重い障害負って何年も生きるくらいなら私は片道切符でスイスへ行く」と英労働党議員

海外への自殺幇助ツーリズム容認方向への
前保健相の法改正動議と、自由投票をめぐって
にわかに議論が沸騰している英国議会。

労働党の70歳の議員 Ann Cryer氏が
重病や重い障害を負うことになったら自分は片道切符でスイスへ行く、と発言。

既に子どもたちにもその意思は伝えてある、と。

認知症になったり、ひどい障害を負って100歳まで生きるなんて、したくない。
MSや運動神経の病気であまりにもたくさんの友人を亡くしてきたから
重い障害を抱えて何年も生きるようなことはしたくない。

もう子どもたちにも、自分でいったん決心したら
私をスイスへ連れて行ってほしいと伝えてあります。

私のはスイスへの片道切符。
決して勇気ある行いではないけど、
そういう状況では私にしても他の人にしても、そうするしかない。
この国の法律は変える必要があります。

法律を明確にしなければ。

今までのところ、自殺幇助で起訴された人はいないと思いますが
そのうち、何も間違ったことをしたわけでもないのに罪に問われる人が出ますよ。
だから法改正が必要です」

ただし、ここでも議員が言っている「自殺幇助」は
家族なり友人なりを意思による自殺幇助の目的で海外へ連れて行く行為のこと。

現在の英国の自殺法は1961年にできたもので、
具体的に何を自殺幇助とするかが曖昧なため、
今のように英国人が100人以上もが既にスイスのDignitasクリニックで自殺している中、
それに協力する家族や友人の行為が自殺幇助をみなされた場合には
最高で14年の禁固刑となる可能性があり、

去年からMS患者のDebbie Purdy さんが法の明確化を求めていた。

MP Ann ‘would go to suicide clinic’
The Telegraph & Argus, March 20, 2009


しかし、Cryer議員がここで言及しているのも、
「重い病気」であったり「恐ろしい障害」であったり「認知症」であったり

決してOregon州などの尊厳死法が対象としているターミナルな病気ではないことには
十分に注意すべきではないでしょうか。

私が目下、気になって仕方がないのはこの点で、

そこの線引きが十分でないまま自殺幇助が議論されればされるほど、
重い障害はターミナルな状態と同じくらい悲惨であり、
尊厳のない状態、または生きるに値しない状態だという認識が
社会に広がっていく危険があると思う。


こういう発言を受けて
その内容を不用意に「最悪の事態がおきた場合には」という文言でまとめる記者にも
もうちょっと慎重かつ厳密な表現を望みたい。