成長抑制一般化でA事件はめでたく幕引き:でもAshley父は「世界中に広めよう」と

今回の成長抑制シンポの詳細を読んで
私の頭に真っ先に浮かんだのは、

ずっとずっと懸念していたことが、
とうとう、やっぱり、ついに現実になってしまった……という思い。

シアトル子ども病院は、多くの重症児の尊厳と引き換えに
これでAshleyケースという非常に特異な背景を持つ第1例の幕引きに成功したのだな、と。

        ―――――――

私がこのブログを始めたのは2007年5月、
Ashleyケースを巡ってシアトル子ども病院でシンポジウムが開かれた直後のことでした。

既にたどり着いていたAshley事件の真相についての仮説を念頭にシンポのWebcastを見た時に、
この事件はこのままではすまない……と直感し
いてもたってもいられない思いで立ち上げたブログでした。

病院はもう後に引けなくなってしまった、
何が何でもウソをつき通して正当化するしかなくなっている、
病院にとって最も有効な第1例の正当化は第2例を作ることなのだ……と
シンポジウムから確信したからです。

去年1月のDiekema講演の前後には
ウソにウソを重ねて強引な一般化を行い、正当化してしまいたい同医師と
本気で他の重症児に広めようとしている父親の利害が見事に一致していることに
更に危機感が募って、またしても、いても立ってもいられない思いに駆られ、
自分の力量をはるかに超えていることを承知で英語ブログも立ち上げました。

Ashley事件の細かい情報を検証する当ブログは
「議論の本質とは無関係な意味のないことをやっている」とか
「ただのスキャンダルをほじくっている」といった受け止め方をされることが多かったけれど、

私としては、
Ashleyケースは絶対に前例にしてはいけない特異な背景のあるケースなのだということ、
それぞれ病院は保身のために、父親は独善的な使命感から
この療法を一般化しようと躍起になっていることへの危機感と
さらに世の中の空気そのものが、そういう方向に変質しつつあることへの懸念とを
この2年間、私なりに一生懸命に訴えてきたつもりでした。

もちろん、日本の1人の母親ごときに何ができると思っていたわけじゃない。

でも、やっぱり、この展開は悔しい。
この2日間、ほとんどウツ状態ですごしているほど悔しい。
(グチってます。ごめんなさい)

あんまり悔しいので、いま一度ここで書いておきたい。

2007年1月に世界中で論争を巻き起こしたAshleyケースには
父親がマイクロソフトの幹部と思われ
ワシントン大学ゲイツ財団との密接な関係があることから
しかるべき倫理検討を経ずに水面下で行われたものだった疑いがあります。

きちんとした調査が行われない以上、証明はできませんが
もしも当ブログが検証してきた仮説が事実だったとすると
子どもを守るべき子ども病院が政治的配慮から職業倫理を放擲し、
ズルをし、そして、さらにヘマをしたわけです。

ヘマとは、これが表に出た時に他の重症児に及ぶリスクを承知しつつ
父親の意向を入れて公表してしまったこと。
(2006年の医師らの論文は異様なほど「恣意的応用」「濫用」予防の必要を繰り返しています)

そして、ズルとヘマの結果、
本来水面下に留まって他児には影響しないはずだったケースが表に出てしまったために
病院側はAshleyに行われたことの中でなんとか正当化できそうな成長抑制にフォーカスし、
強引に成長抑制を一般化する以外には
第1例の特異さから世の中の目を逸らせて
無事に幕引きをすることができなくなってしまった。

そして、今回のワーキング・グループの報告によって
Ashleyケースという非常に特異な背景を持つ第1例の幕引きが
病院の思惑通りに成功したのだなと、私は受け止めています。

もう、ここまできたら、成長抑制は他の重症児に次々と実施されるのでしょう。
もう、ここまできたら、いまさらAshley事件の真相になど何の意味もないのでしょう。

しかし、Ashleyの父親は決して自分の計画を幕引きなどしていません。
彼がブログで書いているのは「米国の重症児のために」ではなく
「世界中のPillow AngelたちのQOLのために」なのです。

ゲイツ財団の資金は世界中の医療研究機関に流れています。
ゲイツ財団がワシントン大学に作ったに等しいIHMEは
世界中の保健医療の施策をコスト効率で採点し、見なおすことを目的に掲げています。
WHOも世界銀行も何カ国かの国の保健相もIHMEと繋がっています。
世界中で「障害者にかかる社会的コスト」が取りざたされています。

私はAshleyの父親がゲイツ氏と直接に繋がってやったことだとまでは考えません。
しかし、Ashleyの父親が“Ashley療法”を考え付いたのは
ゲイツ氏やIHMEやNBICと価値観・文化を共有する人物だったからだと思います。

そして、Ashley事件がこういう形で幕引きされたことによって証明されたのは

今の世の中では、そういう人たちが
世界がこれまでに経験したことのない途方もない財力と権力とを既に握っていて、
その権力の前には、倫理委員会もメディアも人権擁護機関も、もはや機能しないという恐ろしい事実。

恐らく、
科学とテクノロジーによる障害者への侵襲と、それによる社会的コスト削減は
重症児への成長抑制に留まらず、じわじわと拡げられていくのではないでしょうか。

重症児だから侵襲されているのではない。
きっと重症児から侵襲が始まっているだけなのだから。